前尾根(御在所岳)
    1212m
(三重)


2005年10月16日 晴れ

裏道で綺麗な紅葉。柿の葉みたい。藤内沢の滝も綺麗。



準備をしてテストストンで練習。今日は登山靴。岩のアイゼン穴に靴先を掛けかかとは下げ気味に。膝を曲げていると重心がずれる。伸ばすと重心がまっすぐになって滑らない。意識して伸ばすようにする。おなかの前にバスケットボールでも抱いているように。

そしてザックを背負いP7へ。
ザイルは一本で真ん中の人(夫)はワッカにしてループに、下の人(私)だけが八の字結び。このザイルはいつも張った状態にする。

私が下なので木に確保する。シュリンゲを木にかけてチェーンをいっぱい伸ばす。自己確保。ルベルソにザイルをセットする。ザイルを出す。出ない。ルベルソをはずす時、回転させてしまってつけると上下反対になる。よくわかっていない。
まごついていると、「いいですか?」と見かねて次のグループのトップの人が教えてくれる。できた。
「ビレイ解除。」自己ビレイを解除する。ルベルソのはずし方もよくわかっていない。又教えてもらいながらやる。
「こんな人がいると迷惑ですね。」とあやまって感謝しながら登り始める。

が登山靴なので足を掛けるにもクライミングシューズとは違う。うまく足が置けない。かからない。下から三メートルほどの所で全く動けない。「右足を古いハーケンにかけて。」と下から先ほどの方の指導が続く。やっと行けた。
岩間に木がある所の下で確保されているのでそこまで行く。自己確保。場所が狭いので落ちそうで怖い。
そこで先ほど教えて頂いた方に先に行ってもらう。木の上は左端リッジを行く。丸い岩の取り付きは一番下の小さいスタンスに左足、右手は高く、右足を斜めにかける。できた。
ここP7はレベルが高く五級くらいとか。


P6は左岩から。足を押し付け小さいクラックを越えて右にあがる。前に跳び箱のような岩。初めのスタンスが小さすぎて取り付けない。二番目は大きいが・・・。思い切って行くと取り付けた。手がかりはほとんどない。小さい。ヌンチャクをもってマントル。左岩に覆いかぶさる感じ。
右に行って左に戻り過ぎないように戻って岩の隙間を匍匐前進するように行く。手とおなかで進むらしい。右足はだらりとして。今日は背中のザックが支えるし動けない。できない。左手上に持つ岩があった。
どうにかチムニー下へ。先ずザックをカラビナにかけ上げる。「チムニー」不思議な事にこの前よりえらくない。ずり落ちないし息も切れない。なぜかなと思ったら今日は登山靴。前回はクライミングシューズ。ここは登山靴の方がしっかりフリクションが利くということだろう。
その上は平ら。ここから一壁がよく見える。今日の一壁はすごい人。二十人以上張り付いている。みんな寒いのか上着を着ている。日陰だから?こちらの前尾根は暖かい。日当たりがいい。夏と同じTシャツ一枚。
結構風があるので岩がどんどん乾いて行く。


P5。
はじめはザイルなしで。上から今登ったルートを見下ろす。必ずしもロープがある所を登る必要はない。ルートファインデングとはやさしいところを行くこと。疲れないために。
このあたりで目の前の中尾根オニギリを登る人が目に入る。あれがオニギリ?最後は右からと左からとまんなかのルートがあるようだ。あのとんがりの上に立った気分はどんなだろう。見ているだけで心臓が止まりそう。
私は、中ほどをチムニーの姿勢であがる。しばらくして体を左向きにして上部左のクラックに入る。


P4は比較的楽しいが一番上の岩に出る時、両側に何も無いので思い切りがいる。足がかりがしっかりしているので周りを見ないで岩だけを見て体重をかける。すぱっときれ落ちたところを飛ぶ時は血の気が引く思い。
ここで遅いお昼。
私たちが行こうとしているP3の上に六、七人。ヤグラの左から夕日が射して眩しい。岩上の五、六人のクライマーがとても神々しい。
P3は左端を行ってスラブ岩の手前で右へ。二つ岩は右から巻く。岩を抱きかかるようにしてクライムダウン。ヤグラ下のコルに着く。ここは一番楽しい岩。



下りは前壁ルンゼから。降り始めるとすぐ大岩が崩れ落ちていた。こんなのが落ちてきたらつぶされる・・・。「こわいよ。」
いつもながらここは浮石が多いので下に落とさないように、又自分も滑り落ちないように慎重に歩く。前壁下でヘルメットなどを取る。N山岳会はここでいつも練習されるそうだ。
今日は登山靴での岩登り練習。足が滑るような気がしてクライミングシューズで出来た事ができなくなった。臆病になる。もともとそうなのでさらに・・・。
片足に体重を乗せる事が山靴だと不安になる。それはしっかり乗せていないからだろう。膝をもっと伸ばせるようになるといいのだけど。怖いから伸ばせないし・・・。
テストストンで出来るならどこでもできるはずなのに・・・。
?そういえばテストストンだって歩き始めた頃は怖かったはず。二、三歩上がってずり落ちていた。何度もやったら登れるようになったんだった・・・。
できないのは場所と高度に恐怖を感じるから。きっと慣れない前尾根で慣れない岩だから。
テストストンのように何度もやればいつか慣れてできるんじゃない?
秋晴れのクライミング日和の今日、新たに微かな希望をもった私。
三時を過ぎてもまだウサギの耳で岩登りする人がいた。





2005年10月23日 くもりのち雨

朝、千草あたりで山を仰ぐ。山頂はガスがかかっている。道路は濡れている。今朝方雨だったのかな?
白い鉄塔とその下の岩峰群に朝日が当たって綺麗。岩が緑の草原に遊ぶ羊のように見える。
今日は晴れるかな?裏道登山口辺りは曇り。気温が低い。

バーゲンで買ったスカルパの冬靴。張替え完了して履くのは二回目。なんか足がゴソゴソする。厚手の靴下の中にもう一枚はくと丁度いい。

小屋あたりの紅葉はまだまだ。

藤内小屋にSアルパインクラブの北川(旧姓小川)さんの写真が飾ってあった。スキー板をザックに背負っている。
彼女が参加した日本女子登山隊ガッシャブルム登頂という冊子を見せてもらう。8000mの山に女性だけで登頂したというもの。田部井淳子さんをリーダーとする登山隊。その時リーダーは清水さん。隊員数名。その中の一人。凄い人だったんだ。偉業を知って改めて尊敬する。
古いアルバムの中に昭和三十四年の御在所岳藤内壁を見つける。(私が小学生の頃?)その頃この小屋ができたとか。
半世紀が経つというのに、一壁は今と何も変わっていない。当たり前といえば当たり前だけど・・・。
多くのクライマーが御在所岳のこの壁をトレーニングの場としてより高い峰を目指したのだと思うと胸が熱くなった。その影で北川さんの様に命を落とした人も・・・。
時が過ぎて登る人や登攀道具は変わっても、山に惹かれる人の気持ちは半世紀前も今も変わらない・・・。
私が知るよしもない時代の藤内壁。セピア色の一壁の写真が目に焼きついて離れない。

ウサギの耳辺りで小雨、すぐあがる。藤内沢に入ると岩が濡れている。前尾根下テストストンも。
でもなぜか滑らない。ここではしっかり登山靴で岩に乗る練習。夫は靴が柔らかいのでかかとが上がる。膝も曲がる。
私は靴が硬いのでしっかり片足に乗れる。数回上り下り練習。テストストンではうまく乗れるのに「高さ」に弱いから困ったもんだ。目の前の岩だけに集中するようにしよう。
ここで今冬、国見岳をご一緒したSさん。
「先週のページ、綺麗でしたね。」とお褒めの言葉。(勝手にそう解釈する。)
雪の季節を前に藤内沢や前尾根の下見?を兼ねて「今日は国見岳の方へ。」行かれるそうだ。

我々はP7へ。
天気がはっきりしないので行ける所まで。
夫は木にシュリンゲをかけ、それにチェーンをかける。
私は、岩に巻いて張る感じで。ルベルソを取り付ける。ザイルを出す。
「完了。」「ビレイ解除。」解除して私が先に上がる。
今日はクラックに靴をねじ入れることが出来た。右足は古いハーケンじゃなくその左の細いクラックにかける。登山靴になれて先週より楽。ところが岩が冷たく手がかじかむ。凍りそう。これから冬に向うんだからこれが普通だよね。
リッジ手前はアイゼン跡がありそこに乗る。先週はよく見ていなかったので目に入らなかった。岩間の木あたりでチェーンをかけて自己確保。この前ここに立つのも怖かったけど今日はそうでもない。
ここで雨が降り出した。秋雨が頬に冷たい。もう少し行きたかったのに・・・。止みそうにないので仕方なくここから懸垂下降で降りる。足を岩にかけ突っ張る感じで。
次のグループは取りやめて帰った。一壁に行った若者もクライミングせずに降りてきた。
ハイキングなら少々雨が降っていても平気だけど岩は雨が降ると危険だから即中止。我々は登山靴だがクライミングシューズだとよけいに滑りやすいとか。
なんか岩登り中断は消化不良て感じがする。
裏道ではビニール合羽を着た登山者が大勢登って行った。小さい子供もいたけど大丈夫かな?
朝では天気は回復すると思ったのに残念。今日の御在所岳は十月だというのに気温も上がらず寒い。風雨も冷たく、まるで初冬だった。


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