御在所

        1212m (三重)
GOZAISYO

2008年1月27日 晴れ

P6:45〜(本谷)〜大黒岩9:40〜望湖台10:50〜(藤内沢)〜P13:40

朝、モルゲンロートが綺麗。岩に乗った新雪が柔らかく滑りやすい。夫は谷を詰めるが私はトレースどおり尾根を行く。不動滝下で谷へ降りた。

これからの上りが危ないのでアイゼンをつけよう。目の前の岩の上の雪に見とれる。なんと雪の結晶がそのまま残っている。綺麗。
滝横は滑落しないように木の根や幹を持って慎重に登る。

一本杉を谷へ。
スタンスが大きくいつも楽しく登る岩が雪に埋もれている。ピッケルで雪を払い、登ろうとするが取り付くこともできない。雪がつくとグレードがあがるというのはこういうことだろう。

一枚岩。
鎖をもってアイゼンをフラットに置いて慎重に。

リボンの滝。
今年は氷が少なくリボンになっていない。

大黒滝下。
休んでいると一人追い越される。話しはじめると「若者さん」だった。山を始めて11ヶ月で70回。すごいはまり方!
ここからは「若者さん」ことT尾さんと一緒に進む。
「25日に歩いてほしかった・・・。」御在所最高の雪を独り占めされたそうだ。
彼はバンドのような岩の中ほどを、ガバにピッケルを掛けうまく上がった。夫も。
私の番だが・・・。怖がりの私は雪におののいて体がガチガチ。あきらめて左の木から。

大黒滝は凍っていた。
氷のシャンデリアだ!何年ぶりかで見る滝の美しい姿。しばし自然が作り出した雪と氷の芸術作品にみとれる。


くぐり岩横岩。
雪を被っているが、アイゼンが効く様な雪ではなく柔らかい。夫はピッケルを差し込んで雪を踏んだりアイゼン前爪を蹴りこんだり色々工夫しながら慎重に登った。
私はあきらめモードだったが・・・。短いロープを下ろしてもらって腰に巻き、一歩一歩登る。T尾さんは滝から中ほどを登った。

「ここからは行ってください。」お言葉に甘えて優先席へと進む。見上げる本谷は雪と樹氷に包まれた白い世界。私は今までこれほど美しい本谷を見た事がない。綺麗。
これ以上白くなれないほどの白い世界に入っていく。なぜか自分も白くなってしまいそうで気分は最高。
ロープウエイから誰か手を振っている。声が谷によく届いてすぐSさんとわかり手で答える。

上部の岩場。
雪に埋もれているが「この辺にスタンスがあるはず・・・。」と雪をのけて足を置いたり、そのまま硬い雪に蹴りこんだりして楽しく登る。

T尾さんはT木さんの写真に手を合わせている。「知らないんですけど、いつも見守ってくれる気がして。」と・・・。
そうかも知れない。きっとそう。いつも人懐っこい笑顔で優しかったT木さんは、この世を去ってから山好きな人の心の支えになっている。御在所の風になって・・・。そう思いたい・・・。


中ほどから大黒尾根へ木登り雪登り。尾根の雪を歩いて綿帽子かぶった大黒岩前へ。岩の左から回り込んで前岩からテラス上の岩へ。雪をはらってもうまく乗れず膝で・・・。
目の前には白屏風が広がっていた。なんて美しい白い御在所だろう。その白さの中に赤いロープウエイが入ってくる。それもいい・・・。
翼があればこのまま直ぐにでも飛び立ちたい。そして鳥になって白い御在所を空から見下ろしてみたい。もちろん私も白い翼で・・・。
両手を空に広げ気分だけ鳥になる。これは最高。もうずっとここにいたい。
至福の時ってきっとこういう時をいうんだろう。

  
尾根から一の谷道へ合流。山頂直下の大雪を越えて広場へ。青い人工氷ばく前にはちびっ子がいっぱい。センター前でお茶にする。
わかんを持ってきたので練習しよう。ひもの結び方を忘れているので・・・。一年ぶりにつけて遊歩道脇の雪原を歩く。結構はまり込む。
三角点への階段を登りはじめて仰ぐと前方に赤いカッパが二人?T尾さんも鎌ケ岳へ行かず、一緒に藤内沢を降りるそうだ。

私は一人で望湖台へ。
右への雪庇尾根はできたかなと少し進んでみるがわかんでもはまりこんでとても歩けない。望湖台はくもって上水晶の尾根すらのぞめない。
わかんに変えたのにアイゼンのつもりで歩いて二回ひっくり返る。雪があるのでなんともないけど、体の反応が遅すぎ!

C日新聞掲載の遊歩道樹氷写真はここだなと思う所で私も撮影。今日も青空はないけど今季最高の樹氷。


その白いトンネルをくぐって三ルンゼの大岩へ。さて藤内の雪はどんなだろう。
柵から下り始めるとトレースはいつもと違って右寄りに樹林帯を行っている。雪が少ないから?
三ルンゼには10数人。アイスクライミングの順番待ち?年配の方ばかりだけど、じっと待ってるのって寒いだろうな。
目の前に白い前尾根と国見岳が美しい。

下から次々クライミングに登ってくる。ヌルヌル岩では年配の方三人がハイキング。「こんなところ降りるんですか?」と驚かれる。それより自分や仲間のことを心配したほうが・・・。三番目の人はよろよろで見ていてはらはらする。大丈夫かな?
ここはよく雪崩が起きる所だし・・・。

その後ちょっとシリセード。雪が一緒についてくる。やっぱり雪崩れそうな雪。ここで雪崩を起こしてはいけない。トレースも崩さないように・・・。
いつも奥叉の滝へトラバースする斜面は、雪が少なすぎて行くこともできない。勿論滝は凍っていないだろうし。

その下の階段状の岩場はアイスバーンになっている。後ろ向きクライムダウンや、前向きの確実な一歩でおりる。けっして慌てない。
T尾さんはお仕事柄とても慎重だ。確実に決めてから体重移動している。いい加減な足の置き方はしない。「三点確保、絶対落ちないように歩く。」とおっしゃる。

下からザイルで4人つながってきた。ガイドのMさん、後の3人は見るからに高齢者。この中のだれか一人でも落ちたらガイドも一緒に行くんじゃない?と心配する。

枯れ枝からマイナスの滝下へ。
中ほどからクライムダウン。ピッケルを刺して一歩ずつ降る。体が壁についていると下の足場が見えないのでできるだけ離れるように意識する。そして下の足元をしっかり見る。
マイナスの滝から若者が二人降りてきた。氷がないのであきらめて三ルンゼへ行くようだ。
以前ここから前尾根フランケ下へ滑ったこともあるが今日は雪が少なすぎてそんなこととてもできない。
アイスバーンを横切って右岸へ。バランスを崩さないよう綱渡り気分で歩く。降りて再び氷を登る練習?滑落しそうなのであきらめる。


この後のコオモリ滝下が難関。雪が多い時は階段になっているが、今日は周囲の雪があまりに少なすぎる。慎重に降りて見上げればマイナスの滝の氷がちょっと白い。やはり全面氷ではないようだ。

最後の難関は廊下のような岩場。
ピッケルを刺し、前つめをしっかり蹴りこんで次の一歩を慎重に置いて降る。ここはいつも緊張する。
倒木を左に折れてツララ前へ。氷柱を抱きかかえて降る。最後のツララが途中で折れて切り株のよう。そんなのが上から落ちてきたらと思うと怖い。
藤内滝下へも足場の雪が少ないので慎重にトラバース。「ふーっ。」前尾根テストストンへ無事到着。


バットレスを見上げれば頭上に中又の氷が青い。
出合でアイゼンをはずし、ウサギの耳からもう一度籐内を仰ぐ。静かな冬の藤内壁に魅せられる。


雪が少なすぎてあちこち凍り、危険箇所が多かった今日の藤内沢。雪崩は勿論、我々も含めて高齢者が多いので人が降って来るような滑落事故にも気をつけなければならないだろう。雪はいつも同じではないから。

裏道から中道へ。
足が疲れてフラフラ。よく吹き溜まりができるザレを喘ぎながら登る。


駐車場に戻って山を見上げると青空が広がった。そこには白い衣装を纏った御在所が凛として聳えていた。朝、大黒岩で魅了された美しさそのままに・・・。

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