池平山〜仙人池

         2561m(富山)
IKENOTAIRA

2008年8月14日 くもりのち雷雨

テント4:50〜池平小屋(6:00〜6:40)〜小窓展望台〜(小窓雪渓)〜小窓9:00〜(北方稜線の一部)〜池平山11:00〜池平小屋(11:30〜12:00)〜仙人峠12:30〜仙人池ヒュッテ〜峠13:40〜二股15:00〜(南股)〜真砂沢ロッジ下流の橋16:20〜真砂沢

小窓雪渓からのつづき。

ケルンが現れて池平山山頂。やれやれやっとついた。
北方稜線は(ほんの一部だけど)迷い道くねくねで怖かった。そこから池平小屋へ降る道は稜線とは比べ物にならない歩きやすい道。雷鳥が数羽、花をついばんでいた。少し雲が空いて後立山連峰が望める。あたりは一面お花畑。



池平小屋到着。

靴の中が雨でぐちゃぐちゃ。ストーブで濡れた衣類を乾かし新聞をいただく。新聞は冷えた体に巻くと暖かいし、靴の水分を取るのにもいい。
小屋の管理人さん「今年北方稜線を歩いた人たったの四人。」それでは踏み跡がないはずだ。昨年道迷いで滑落後亡くなった人も・・・。ほんの一部を歩いただけだが納得できる。我々にはまだまだ敷居が高すぎ・・・。

壁に「点の記」の寄せ書き?出演者全員がこの池平小屋に泊りこんでロケをしたとか。映画も楽しみ・・・。
話しているうちになんとこの管理人さんは愛知県大府の方でOさんの知り合い。御在所も時々登られるとか。
夫は小屋特製の「点の記ラーメン」を注文。映画の記念にラーメン好きの監督さんが名づけたそうだ。
小屋前にかけられた鐘をならして登山者を送り出してくれる。「気をつけて。」と鐘がそう言っている。ここまで登って来る登山者は限られるだろうに、あたたかみのある本物の山小屋だった。



仙人峠から仙人池へ。
峠付近にはニッコウキスゲが咲いていた。滑らないように切込みがいれてある木道を歩く。辺りにはチングルマの綿毛。
何年か前にNHKのドキュメンタリー番組で見た事があっていつか行きたいと思っていた仙人池と仙人池ヒュッテ。雪の重みで屋根がべコベコにへこんでいる。それを見ただけでどんなにすごい雪なのか想像できる。

名物お母さんは見えなかったけど(足を痛められたそうだ)剣岳を映す仙人池は静かに水をたたえていた。湖畔のナナカマドは緑の実をつけている。もうすぐ赤く染まりそう・・・。うまくいけば十月の初めには初雪と紅葉の錦絵巻が見られるそうだ。是非秋にも来たい。夫等はヒュッテ特製の牛丼で腹ごしらえ。

分岐の峠に戻って歩き始めると雨が降りだした。雷も。足早に尾根上のテントに戻る。このままテントで雨を止ませたいのに「ここは危険だから降りる。」という。
怖がりの私は震えながら無我夢中で土砂降りの中を歩く。相変わらず地響きがするほどの雷。こんな雨の中を歩いているなんて普通の人から見れば「狂っている」よ。

昨日、内藏助谷あたりでブーブー言っていたのがきっと剣岳の神様に聞こえ、お怒りになったのだろう。勝手に登っておいて不平たらたらごめんなさい。心の中であやまり続ける。



二股到着。
大岩の影でしばらく雨宿り後再び歩き出す。三の窓雪渓からの雪解け水が溢れている。ごう音と共に濁流が押し寄せている。南股は昨日とは全く別の川だった。流されないように岩壁にへばりついて必死にへつる。

昨日高巻いた雪渓はスノーブリッジをそっと静かに渡る。真砂沢の橋は渡れるだろうか?それが心配で足早になる。靴の中は水浸しだけどそんなのかまっていられない。

橋に到着。濁流は今にも橋を越えそう。迷ってる場合じゃない。今なら渡れる!ロープを持って流れを見ないように、丸太橋への足の置き場だけを見て一歩ずつ。やっと二つの橋を渡りきる。降り口の水量が腰まであって流されそうになる。なんとか無事川原にはい上がり、土手のテント場到着。
急いでテントを設営し、中に滑り込む。ところが中が水浸し。まず水をふき取る作業からしなければならない。テントの中や濡れたものをタオルで拭って絞る。何度も何度も・・・。外は雨が降り続いている。

どうにか座れるようになった。濡れた物をビニール袋に入れる。
夜用の衣類はなんとか着られた。サブバックに入れたダウン上衣などが濡れた。どんな物も必ずビニール袋に入れなければならないと知る。
幸い、ライターが使えた。ガスをつけて体を温め濡れた物を乾かす。火はなんて有難いのだろう。火がなかったら夏でも凍死するよ。雷は治まったようだが雨は断続的に降り続いている。二時間ほどの嵐は峠を越えたようだ。

I藤さんが、近くで湧き水を汲んできてくれた。有難く使わせていただく。
やっと一息ついてパン、リッツ、紅茶で夕食。

雨をしのぐテントと暖を取れる火に感謝し、濡れたマットにツエルトを敷いて休むことにする。靴には新聞紙を詰めて・・・。
すさまじい勢いで流れる川の音がゴーゴーと夜通し聞こえた。遠い別の世界のことのように・・・。



2008年8月15日 くもり時々晴れ

真砂沢4:30〜ハシゴ谷乗越〜内藏助平〜出合〜黒部ダム、トロリーバス12:05〜扇沢12:20〜葛温泉(仙人閣)〜安曇野(蕎麦たかやま)〜(日本アルプスサラダ街道)〜新島々〜高山(東海北陸道・名神)羽島〜自宅21:00

靴が乾いていないのでビニール袋を足に被せ靴をはく。水分を吸った衣類などが重く水2リットルほど増えた感じ。14、5キロほどあるのでは?

朝食、残り物のパンと紅茶。行動食は飴、キャラメル。真砂沢からの登りの水場でアミノバイタルを飲む。歩き始めて30分ほど。ちょっと元気になる。今日も天候ははっきりしない。それでも乗り越し辺りから剣沢雪渓を見下ろし剣岳を仰ぐことができた。見納めだ。

ハシゴ谷上部の岩は苔が生えて濡れて滑りやすく、数回転ぶ。

内藏助平。
真砂岳からの水量が多い。ここで冷たい水を汲む。
内藏助谷で岩の上の細かい砂に足を滑らして落ちそうになる。「よく見てそんな所へはぜったい乗らないように。後ろ向きにクライムダウンで慎重に降りること。」「足の置き方が悪く危なっかしい。どんな時もフラットに置く。」珍しく私のすぐ後ろから歩いた夫の一言。いつも先に行ってしまうので私の歩き方など見た事がない人からの助言。有難く聞いておく。
私ってきっと普段も踵を浮けて歩いているのだろう。気持ちだけが先走って山に来ているようなものだから。


クライミングの岩場「オオタデガビン」という壁を見上げる。

出合。
下の廊下へのつり橋を見下ろす。この先はいつか秋に歩きたい道。十字峡やS字峡など未知の世界に思いを寄せる・・・。
川には岩のような雪渓。足元にはシモツケソウやキンレイカが咲き心和む。ダムも見えてきてホッとする。立山山頂もガスっているようだ。
内藏助谷を降ってみて、改めてとても急登だったことを知る。




黒部ダム到着。扇沢行き12:05分発トロリーバスに乗車。

葛温泉「仙人閣」
熱い湯が山旅の疲れを吹き飛ばしてくれた。

日本アルプスサラダ街道は名前のとおり、リンゴやトウモロコシ畑沿いのいかにも長野らしい道で好き。通るのは二回目。「日本のスイス。」!ここに住みたいと思う町安曇野。「たかやま」で手打ち蕎麦を頂き、新島々でもぎたてのリンゴをお土産に。

東海北陸道の大渋滞にはまって遅い帰宅となる・・・。

内蔵助谷の苦しい登りを越えた人だけが知る、別次元の小窓雪渓、ミニ北方稜線、池平山。おまけとして、初めての雷雨と洪水体験。

今回は北アルプスのスケールの大きさと、併せて夏山の怖さも思い知る山旅だった。剣岳の神様は甘くなかったけど、無事帰れてよかった・・・。

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