不帰ノ嶮・天狗平・白馬鑓ヶ岳
       (富山・長野)

KAERAZUNOKEN

2005年9月24日 晴れのちくもり

起床3:15〜(テント撤収)〜テント場4:15〜唐松岳山頂5:15〜不帰ノ嶮、不帰キレット7:15〜天狗の頭8:30〜天狗山荘昼食(9:30〜9:50)〜鑓温泉分岐10:30〜鑓温泉(12:00〜12:30)〜猿倉15:30〜(タクシー)〜白馬五竜スキー場・十郎の湯(温泉)・蕎麦屋17:30〜(R147)〜豊科(長野自動車道)(中央道)(名神)羽島〜自宅10:10

天狗山荘昼食カレー他¥1200
鑓温泉¥300×2人
タクシー料金¥5000
十郎の湯¥600×2人
蕎麦他¥3000

三時頃、東の空にオリオン座が綺麗に輝いている。月も。空が明るい。
お湯を沸かしてインスタント味噌汁。チーズ、パン二個、うめぼし、紅茶で朝食。

歩き出すと月明かり。足元の草露が光る。まるで宝石のようにキラキラと。夜空に浮かぶ星のようにも見える。綺麗。
え?これはどこかで見たような風景・・・。これは串田さんの「山のパンセ」の世界。
月明かりで歩くなんて。又この草露の輝きを誰が知るだろう。月がなければ知る由もない世界。

新しいヘッドライトが点滅する。おかしい。小屋から歩き出すが直らない。山頂へ。あたりはまだ暗い。5時前だもの。仕方なくそのままの状態で行く。電池がないのかも・・・。
やがて東の空が少しずつ明るくなってきた。ひんやりとした大気の中、慎重に不帰ノ嶮に向かう。




不帰ノ嶮、三・二・一峰と進む。八方尾根上からご来光。先ほどいた唐松岳が随分遠くになった。頂上の人も目に入る。
岩が朝露に濡れている。より慎重に行く。どことなく穂高岳の雰囲気。クサリが続く。一歩踏み外せば大変だ。三点確保で確実に歩を進める。
不思議と高度に恐怖感はない。これも夏に穂高岳縦走を経験したから?
雲ひとつない空、左手に青い立山、剣岳の峰々が朝日に輝く。
私は今、不帰ノ嶮を歩いている。楽しい険しい岩稜歩き。心はここを歩ける喜びでいっぱいになる。ハッピーでハイな気分。

不帰のキレットに着く。前方を見上げれば立ちはだかる大きい岩壁。天狗の大下り?ここを今から登る。



上り始めると右手の谷から何か飛んでくる。ひらひらと・・・。
「アサギマダラ!」
あのハンカチが舞うような独特の飛び方で。谷からの風に身を任せ力まず自然体で飛ぶアサギマダラ。美しい。見とれる。
しばらくすると又同じ方向から(栂池高原あたりかな?)一頭ずつ。ヒラヒラと。数十秒おきに次々と飛んでくる。そしてあっという間に唐松岳の方向に消えて行く。
谷からの風を利用してこの山の稜線を渡って行くのだろうか。一頭だけ私の傍まで挨拶に来てくれた。二十頭ほども見送っただろうか。こんなに沢山出会ったのは初めて。きっと渡りの真っ最中なのだ。
興奮して感動して何を叫んでいたかわからない。
なんという出会い。憧れのアサギマダラのその渡りに会えるなんて。
何度も写真を撮ったけどうまく撮れなかった・・・。

たしか岳人十月号に新穂高ビジターセンターでアサギマダラにマーキングして行動を調べていると掲載されていたが・・・。
どこへ渡って行くのかなぜ海を渡るのかいまだ謎ばかりの蝶らしい。
突然のアサギマダラとの出会いに我を忘れていた。気がつけば随分高度が上がっている。

背後には後立山連峰の鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳、不帰ノ嶮の峰々が重なり合っている。左手には剣岳に続く青い毛勝山が白い雲海に浮かぶ。ただ美しい。
右手の谷は朝からずっとガスがかかって何も望めない。八方尾根あたりを見下ろせるのだろうが・・・。


天狗の頭。
前方にたおやかな峰天狗平。さらにわずか白く白馬鑓ヶ岳。
はるか前方には三角の山容の白馬杓子岳も望むことができる。
ここはなんてなだらかで雄大で広々した所なんだろう。ずっとこのままここにいたい・・・。



しばらく行くと火山活動の後のような黒い岩屑が現れる。ここだけ地質が違う。

天狗山荘到着。9:30
小屋前に雪渓。村営小屋は新しい。木の香りがする。食堂らしき建物もトイレも新しい。
ここで昼食。
夫カレー。私ご飯のみ。
不帰ノ嶮で昨夜ビバーグしたというKさんらに珍しいブロッケン現象の写真を見せてもらう。ちょっと神がかり的な雰囲気。

白馬大雪渓は土砂崩れ後、巻き道で通れるがクレバスみたいな穴があいていたりして危険なので鑓温泉に降りるとか。
そういえば、天狗の頭で出会った人も雪渓の事故と台風の影響で白馬岳に人がいないといっていた。小屋に泊まった人は三十人ほどだけだったとか。

ガスがかかって霧雨が降ってきた。台風17号の動きも心配だ。白馬岳から雪渓を下りると5時間以上かかるだろう。巻き道だともっとかかるかも・・・。
昨年栂池から白馬鑓ヶ岳まで来たからこれで縦走がつながる。大雪渓は次の楽しみにしてそのまま白馬鑓温泉へ降りることにする。
去年も今年も予定していないのになぜか鑓温泉に縁がある。

天狗の小屋から花が多い。ウサギギク、タカネツメクサ、ミヤマアキノキリンソウ、トウヤクリンドウ、黄色のタカネスミレ、チシマギキョウ、ウルップソウの枯れたもの、ヨツバシオガマなど。


稜線から少し降りるとガスがサッとあいて白い白馬鑓ケ岳が姿を現す。たしか去年このあたり雨風が強く濃い霧の中だった。
見上げると鑓ケ岳はその白さが貴婦人の様。綺麗。


ナナカマドの鮮やかな紅葉。霧雨が作った水玉が光る。
チングルマの枯れたものも美しい。
フジアザミ、白いシモツケソウ、ミヤマトリカブト、ミズバショウの葉、ウメバチソウなど。肥沃な地質か皆植物が大きい。


岩がぬるぬるして滑りやすく二回ほど転ぶ。
硫黄の匂いがして鑓温泉。
源泉で体が温まる。霧雨なのでここからカッパの上衣とスパッツを着ける。
その後も所々ナナカマドやオオカメノキの赤い実が鮮やか。小屋手前になるとブナの大木も多くなる。鑓温泉から三時間やっと猿倉荘に到着。15:30。
最終のバスが14:30だったとか。後はタクシーしかない。
一台客待ちがいてすぐに乗車。

標高1000mほどはブナやミズナラ、落葉松が多い。ここのミズナラは鈴鹿と違って大木。落葉松ももうすぐあの落ち着いた黄色に紅葉するのだろう。
スキー場手前の温泉「十郎の湯」も案内してもらう。
その後、渋滞に嵌ることもなく無事帰途につく。

数年前までは後立山を縦走できるなんて思いもよらなかった。体力がなかったし、経験もない。
多分、この夏の槍、穂高縦走がなければ今日の不帰ノ嶮もすんなりとは行けなかっただろう。「怖がり」の私だから・・・。
今回の後立山は、登山の醍醐味であろう縦走の雄大な稜線歩きの魅力に嵌った山行となった。贅沢にも剣岳に見守られながら・・・。

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