鎌ケ岳
      1162m
(三重)


2006年2月5日 くもり時々小雪 一時晴れ

温泉最奥P7:00〜(三ツ口谷)〜三ツ口大滝8:00〜鎌ケ岳(10:35〜10:55)〜(長石谷)〜犬星の滝11:55〜P13:30

厳冬鎌ケ岳の二つの滝を見たい。今日一日で見るには三ツ口谷から登って長石谷へ降りるのがいいかな?三ツ口谷は数回降りたことはあるけど・・・。ちょっと不安。
駐車場で新たに20cm積雪。上はもっと多いだろう。
小雪が降っている。山の家(一の谷新道登山口あたり)からスカイラインに出ようとしたが登りすぎてしまった。
無雪期に何度も降りているのに・・・。雪があるとないのでは大違い。
スカイラインを歩いて三ツ口谷に入る。ダムは全面凍って雪が積もっている。谷も雪に埋もれている。


初めての三ツ口谷ラッセル。堰堤を越えて川沿いに行く。小滝は雪を被って滝壺には氷が張っている。しばらくして右に谷が現れる。知らずにここを行くがたしかこれは巻き道だったと気づく。
戻って本流を直進すると右手に大滝。見事に凍っていた。滝全体が美しい氷の壁。大自然が作り出した氷の芸術。私はこの凍った滝が見たかったのだ。今日来てよかった。しばし美しい氷大滝に見とれる。近づけばさらに迫力満点。


滝の右側から滝上に出る。この斜め四十五度から見る氷の滝も素敵。ここは垂直でほとんど木登り状態。慎重に通過する。一つ間違えば滝に落ちる。滝の上もさらに慎重に。
上に現れた小滝も凍っていた。谷はだんだん雪が深くなる。しばらくして右に上がって夏道に出た。たしか夏に高い所から滝を見下ろすところがあったが・・・。そこだった。
前方に行き止まりのような滝が現れる。こんな滝あったかな?右手に急登する。そういえば夏、危険な急な下りの箇所があった。高巻くように進む。フワフワ雪を数回踏んだりして固めながら。
降りた地点を左に渡渉。夏に川を二・三回渡渉したような気がするがはっきりわからないまま、川の中を歩いたり淵を行ったりする。
雪が多い今日と無雪期では(数回降りているのに)全く感じが違う・・・。時々木に巻かれたテープやペンキが目に入り安心する。
何となく見覚えがある空間。たしか長石尾根の三叉路へ上がる道あたり。鎌ケ岳尾根道分岐。さらにもう少し先を左折して尾根に出る。私が勝手に「長石尾根の草原」と名づけている所。
ここから尾根歩き。私はこういう平らな所に出るとどこを歩いていいかわからなくなる。木に巻かれたテープをしっかり見る。笹は雪の下なので夏とは様子が違うし・・・。「右が三ツ口谷でその左の尾根を行っているのだから・・・。」と頭を働かせるが・・・。



ガレに出た。目の前に展望台。右手の御在所岳は霞んでいる。ガレは雪が吹き飛ばされ積もらないようだ。カメラが凍っている。シャッターを押す指も痛い。気温が相当低い。
シャクナゲ林の下、胸突き八丁。氷があらわで雪がない。この氷はつぼ足では無理。ここでアイゼンをつける。手が冷たくて痛い。かじかんだ指なので思うようにできない。ワンタッチアイゼンなのにとても時間がかかってお世辞にもワンタッチとは言えない。
前爪で氷を蹴って登る。垂直の壁だ。やっとシャクナゲ林を右に見る。前方を見あげれば木々に樹氷。これは鎌ケ岳の樹氷だ。
山頂直下の岩場に出た。ここで少し空が明るくなってきた。山頂を仰ぐ。手前に雪庇尾根。その彼方に樹氷に包まれた白い峰の鎌ケ岳。神々しい。

新雪は60〜70cmほどあるだろう。そのふかふか雪の尾根を越えて樹氷の林へ入って行く。清清しい。やはりここは神の領域。とても神聖な気分。
ここで右下の斜面を見下ろす。もしかしてこれが左又?三ツ口谷に落ちている斜面は魅力的だった。
尾根を登りきって鎌ケ岳山頂。
厳冬鎌ケ岳は荘厳な雰囲気の中、静かで人を寄せ付けず凛としていた。山頂にはあの雪庇尾根。鎌ケ岳の神様はほとんど雪に埋もれ、鳥居の上の方だけがわずかに見えているだけだった。


この時又、空が明るくなって一瞬青空ものぞいた。南方に樹氷におおわれた鎌尾根が美しい。東には雪化粧した田んぼなど、冬景色の里が白く眩しい。
雪庇前でティータイム。テルモスのお湯で紅茶を入れる。至福のひととき。
ペットボトルのお茶は凍って飲めなかった。気温が低過ぎるのか、夫のガスも使えなかった。マイナス七・八度だろうか?
長石谷へ降りようと南に行く。鳥居を見下ろして(自分の方が背が高い?)雪で雪で岩も何もないさらさらの平らな雪面を滑り降りる。

岳峠に降りる谷も一面雪の原。自分の歩いた雪がすぐついてくる。これはすでに雪崩れている。雪崩れやすい雪。
左手のガレすぐ下の斜面には少し雪崩た跡がある。ここから降りたいけどここは危険。雪崩に巻き込まれそう。
岳峠まで行って鎌ケ岳を振り返る。雪と樹氷が黒い岩の鎌ケ岳をより美しく見せている。
厳冬鎌ケ岳。その孤独で力強い山容に見とれる。それは私が今まで見た中で最も凛々しい鎌ケ岳だった。



峠から長石谷へ降りる。
一歩足を踏み入れると驚き。この雪は何?ふかふか。フワフワ。さらさら。雪があるなんて信じられないほど。こんな雪あったの?ほとんど腰近くまである雪は軽くて軽くて超超気持ち良い。またまた雪泳ぎ体験。
長石谷はふかふか粉雪の谷だった。「パウダースノウ」てこのこと?って思った。
行けども行けども軽ーい粉雪。こんな気持ちのいい雪は今まで味わった事がなかった。
時々右手の谷から雪崩れた跡がある。こんなところは早く通過しなければ・・・。雪があってもないみたいだから軽いし速いし気持ちいいし・・・。
所々に昨日のTさんらの踏み跡。そのトレースに新雪が積もってえくぼのよう。「雪えくぼ。」


なんか水の流れ落ちる音。もう犬星の滝?雪泳ぎは岩を歩くより速いみたい。氷が蒼いよ。青く美しいシャンデリア。見事。
近くまで行ってしばらく見とれる。


それからもふかふか雪を歩いたり、雪のついた岩を飛んだりする。一度ひっくり返って一回転。雪だから痛くない。雪で見えない岩の一点に乗ることはとても難しかった。
谷の淵は凍ったり凍りかけたりしている。水に嵌ったら凍える・・・。岩にはコクイ谷の様にフリフリスカート氷がついていた。みんなフリル。今日は氷の写真を撮っている余裕もない。ピョンピョン飛んで行かなくてはならないので・・・。
ふわふわでさらさらで軽い軽ーい雪は登山口まで変わらなかった。約二時間、あっても何もないような信じられないような粉雪の中にいたことになる。白くて静かで綺麗な長石谷だった。それは丸で夢の中のような時間・・・。(人っ子一人会わなかった。)
そして二つの滝の見事な氷ばく。凍った滝に会いたくて会いに行って会えた喜び。自然が作り出したそのシャンデリアは静寂の中に美しく強くそこにあった。
厳寒のこの時期に自然はなんと美しいものを創造するのだろう。そしてその美しさに出会えた私はなんて幸せなんだろう。今日も、厳冬鎌ケ岳から新たな感動をもらった。それは「今この時。」しか味わえない感動。私にとって「今」が全て。

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