鎌ケ岳  
       1162m
(三重)


2007年2月17日 くもりのち雨

P7:00〜(本谷)〜大黒岩9:30〜望湖台10:15〜鎌ケ岳11:30〜(三口谷)〜ダム13:30〜P13:50

朝、一の谷茶屋前の右カーブを通りすぎてから道路が凍っていたことに気付く。
広場でSモニのH谷さん。今日は藤内沢へガイドされるようだ。先日アイゼンがよく外れるので靴の踵を直してもらったばかり。調子がいいと話す。
本谷へ。
岩が濡れているように見えるが実は凍っていた。あちこちの氷に気をつけて岩を歩く。
突然、春を感じて目覚めたばかりのミソサザイやヒガラのさえずりが谷間に響き渡る。思いがけないプレゼントに心弾ませる。
不動の滝上でアイゼンをつける。そのアイゼンで岩を歩くとガチガチという音がする。山を歩き始めた頃よくみかけたが、どうしてそんなもので歩くのか不思議だった。それは雪山に備えてのアイゼンワークトレーニングだったのだ。
氷と岩をアイゼンで歩いたことってあまりない。三ルンゼはピッケル使ってクライミングの真似事だし、御嶽山や宝剣岳はスケールがでかすぎて氷原と言う感じだし・・・。アイゼンは硬い雪によく使う・・・。
雪のない岩を歩くのはちょっとぎこちない。スラブはフラットに置いて、スタンスには前歯二本を置く。普通に山を歩くのと同じで余り歩幅を広くしない。小さめに。


大黒滝。
周囲が少し凍って小さいシャンデリア。滝下はしぶきが凍ってビー玉氷。綺麗。
登山道沿いで岩についた氷に乗ってみる。アイゼンを通して氷と岩を感じる。アイゼンで氷を捉える感じ。
滝上あたりを登っていると下からなにか壊れたようなとても大きな音が聞こえた。滝の氷が融け落ちた?滝下にいたら大変なことになっていた。氷に圧死するか大怪我・・・。
滝に近寄らなくて良かった。雪融けのこの時期、谷は氷や岩がはがれ落ちるのでとても危険だ。
滝上では以前くぐり岩から落ちた三角岩を目にする。上部は砕け削れて、落ちた時を想像するだけで恐ろしい。登山者がいなくて良かった。藤内沢も雪融け時に壁からよく岩が落ちると聞いた事があるし・・・。
危険なV字谷には行かず右のルートを。
ここでは霜柱が綺麗。深く考えたことなかったけど、地中の水分が膨らんで外に押し出されて凍りどんどん大きくなるのだそうだ。そういえば双六岳で10cmほどのを見た事がある。
銀色の霜柱を手ですくうと軽くてシャカシャカというような音がした。心が研ぎ澄まされるような音。どこかで聞いたような?そう、笹の上に樹氷が落ちるあの音に似ている。
くぐり岩右岩。
左寄りに行くとまるで前尾根のチムニー。背中のザックが岩につかえる。谷側にザックをやって匍匐全進する。難関突破。
先日登った廊下のような岩壁も見下ろすがここを登ったとしても凍っているので大変だっただろう。
大きいスラブ岩はアイゼンをフラットに置いて登る。四尾根にこんなところがあるらしい。
岩場の上は柔らかい雪の下にザラメ雪。はまりこまないように「ステップを切って。」硬い雪を蹴りこみながら進む。こんな雪の登りは中道で慣れたので好きになっている。


上部では岩についた氷が白いレースのように美しい。
ロープと大きい杉の木がある斜面から大黒尾根へ。見下ろせば先ほどの本谷の氷がまるで棚田。
大黒岩へ。
積雪期にここに行くのは多分はじめて。岩に綿帽子雪はもうないが岩手前の通り道に硬い雪。怖くてしゃがんで通過。テラスに立つが本谷も大黒尾根も霧の中。
下りは岩の南側を木につかまって通過する。
昨年の大雪時、何度も行き来した大黒尾根上部はロープで通せんぼ。
ここでアイゼンをはずし小休止。生八橋、チョコ、バター飴。
なんの動物かな?大きな足跡。鹿でもないし・・・。よく見ればうさぎ。飛んでいる時でなく立ち止まった時のようだ。


一の谷新道にであって頂上直下にはたっぷりの雪。山頂の人工氷爆は融け落ちていた。周辺がガチガチに凍ってスケートリンク。滑る。ここを歩くにはアイゼンがいるよ!
霧の中、元気なちびっ子たちがソリすべり。
望湖台。
岩に雪はなく雨乞岳は霧の中。今年は小さい雪庇尾根。(去年はとても大きい尾根だった)そこから歩いた足跡があるので辿る。今日ははまり込まない硬い雪。記念碑前には小さい風紋ができている。
所々にアスファルトがあらわな遊歩道を鎌ケ岳へ。
歩道が途切れた所でウサギの足跡。つめあとがはっきり。坂道だから頑張って登ったのかな?
峠道では小うさぎか?とても小さい豆粒のような足跡も見かける。雪があると自然界の小動物の生活もわかる。足跡で。
彼らの姿を想像するだけで励まされ、心が癒され、ほのぼのとした気分になる。私と同じように生きているんだなって。
掘割道で硬い雪に滑っておっとっとと転ぶ。硬雪の降りの歩き方は難しい。予測もできないし経験も少ない。


鎌ケ岳山頂手前のガレ場。
左の尾根から、先週乗ったであろう岩に今日も乗る。
大岩直下。
軽くパンと紅茶で食事。今日はイソギンチャクも何もないので左から巻いて岩の上へ。
鎌ケ岳山頂。
ガスッて何も見えない。人っ子一人いない。
尾根から少し下ってピッケルを出す。シャクナゲ林の西隣りに一本だけ大木があった。笹が起きてちょっと雪が硬くて踵を強く蹴り込まないと雪面に入らない・・・。
少し降りて谷を覗くと綺麗な斜面。尾根に出てもう一度見に行く。緩やかな傾斜に見える。尾根道の胸突き八丁にも魅力的な斜面。でも硬い雪に木などがあって危ない。もう少し柔らかいと歩けるかな?
日本庭園あたりで鎌ケ岳を見上げる。三ツ口源頭部ガレ下の沢に残雪が多い。
庭園を過ぎてもう一度谷へ。
また白く綺麗な急斜面。私は氷のように固い雪が怖くてかかとで降りることができない。左の林の木につかまりながら谷へ。

剣岳の谷筋は夏でもこんなだそうだ。硬い雪面の次はザラメ雪。それも降りトラバース。その斜面を降るのも怖い。ささっと歩いてしまえばいいのだろうがはるか下の岩が目に入り滑り落ちたら怪我をすると思うと足が動かない。慎重に一歩一歩その斜面をトラバース降り。
振り返ると高度感ある白い谷が目の前に。去年この急斜面を降りたのだろうか、信じられない。雪洞があったあたりかな?
中道での硬い雪斜面の上りに鍛えられて、今日の本谷上部ザラメ雪は楽しかった。でも今の氷のように硬い雪面やザラメ雪のトラバース降りは怖くて何もできない。
先日の源頭部や藤内沢での新雪トラバースもできたのだから、もっと経験を積めばこんな硬い雪の降りも歩けるようになるかな。微かに希望を持つ私だった。
出合は小さい滝になっていた。右よりに三ツ口谷へ降りる。ここも急。
二段の滝あたりから氷柱があちこちに。白く輝いて綺麗。
今日の三ツ口谷はさながら「氷の回廊。」


大滝へ。
降りようとしてズズッと落ち葉に足が滑る。しっかり木の根を持っているから大丈夫。
滝の周囲が凍っている。滝下にはビー玉氷。綺麗。ポツポツ小雨が降り出した。


三ツ口ダム。
ここでカッパを着る。雨に濡れながら歩くが少しも手が冷たくない。とても二月の雨とは思えず梅雨の風情。
本谷と三ツ口谷の雪と氷に魅せられ帰途につく。
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