唐松岳
    2696m
(富山・長野)


2006年3月5日 晴れのちくもり

自宅3:00〜羽島(名神、中央、長野自動車道)豊科〜(R147)〜八方スキー場P6:30〜ゴンドラ、リフト二機8:30〜八方池山荘(第一ケルン)8:40〜八方ケルン〜第二ケルン〜第三ケルン〜丸山ケルン〜八方尾根上部12:30〜八方池山荘14:00〜P14:40(昼食)〜大町温泉十郎の湯16:10〜豊科18:00〜羽島20:30〜自宅21:00


八方尾根スキー場ロープウエイ乗り場前駐車場 一日¥1500
ゴンドラは7:30ぐらいから。ゴンドラ¥800リフト¥300
二つ目のリフトが8:30から。うさぎ平からのペアリフトを降りた所で待つ。
1998年長野オリンピック滑降競技が行われた八方スキー場。競技スタートの建物がそのままあった。
日本のトップクラスのとてもスケールの大きいこのスキー場からは白馬三山がすぐそこに。そして鋭い起伏に迫力がある五竜岳も目の前に。
白馬村の方向には青い山並みが美しい。雨飾山、黒姫、妙高、戸隠、浅間山、美ヶ原など・・・。一緒にゴンドラに乗った方に教えてもらう。山に行かずスキーしたいな。
二つ目のリフトに乗って(このリフトも高速。)ゲレンデトップの八方池山荘に着く。アイゼンをつける。スノーシューなども持っているのでザックが重い。11キロ。
山荘前から尾根道を行く。右に白馬三山、左に五竜岳、鹿島槍ヶ岳を見ながらの贅沢な登り。


H町のIさんは赤旗を立てながら行く。尾根が広くなって白い看板と第二ケルン。ガスが巻いたら方向がわからなくなりそう。
ここは風の通り道なのかシュカブラが美しい。広い雪原を越えると唐松岳の山頂や不帰の剣が見えてきた。立派な避難小屋があり左の尾根に上がる。
いかにも山を知り尽くしたといういでたちの人に追い越される。この方一人が先行者。
後ろから十数人ほどボーダーやスキーヤーや登山者が来る。
第三ケルン。
過ぎると大きく左にカーブ、下の樺。風がきつい。このあたりはダケカンバが密集している。
この広々した雪原も風の通り道。強風に吹き飛ばされそうになる。踏ん張ったり前かがみになったりしながら歩く。



丸山ケルン。
上から二人降りてきた。前夜小屋泊、今朝7時出発とか。やはり行動が早くなくてはいけない。
ケルンから強風で足が前に進まない。手は冷たくないが吹き飛ばされそうで怖い。
風当たりがきついこの雪原でテントを張っている人がいる。すごーい。眺望はいいだろうが・・・。
さらに目の前に荒々しい五竜岳や不帰の剣の岩壁が大きく迫って来た。人を寄せ付けないようなその白さに圧倒される。
雪煙が舞い上がる。竜巻のようにくるくる回って降りてくる。シュカブラの雪面を通り過ぎた雪煙が顔に吹き付けてくる。息もできないし痛い。
風に向って踏ん張っているがなかなか足が前に行かない。
尾根がどんどん狭まって両側が切れ落ちたやせ尾根になってきた。右には不気味な不帰の剣。風でこの谷に落ちたらと思うとよけいに足がすくむ。強風が吹き付けてきた時はしゃがみこんでしまう。時々風が息をするように静かな時もあるけど・・・。
せめて小屋までと思って必死で歩くが遅々として進まない。もうすぐそこなんだけど・・・。
唐松岳山頂が曇って霞んで来た。風は治まらない。天気は下り坂。時間も十二時を過ぎている。
山頂に行っても曇って剣岳は望めないだろうし、この強風も危険だ。小屋まであと少しだけど無理をしないで今日の山頂をこことする。未熟な私にとってそれで十分だった。



この風に危険を感じたのか後から来ていた登山者もいつの間にか戻ったらしい。ボーダーも誰もいない。今この尾根にいるのは我々だけだった。
降り始めると五竜岳や鹿島槍ヶ岳にも曇がかかった。
Iさんは赤旗を回収しながら進む。この広い遠い尾根を登ってきたのかと改めて感動する。赤旗がなかったらやはり方向を見失うだろう。
先日この辺りで夫婦が遭難している。雪洞を掘って待機したらしいがそんなことも起こりうるだろう。ガイドブックには雪山中級と書いてあるが天気次第ではそれ以上。
どんどん尾根を下る。上りでは雪のことを考える余裕がなかったけど、雪質は今まで経験した事がないさくさくさらさら雪。水分が少ないというかしまっているというか最高雪質。これが北アルプスの雪?その感触をじっくりと味わって雪原を下る。軽―い軽い雪・・・。
随分登ってきたもんだ。行けども行けども戻れない。やはりアルプス。山のスケールが違う。
上の樺あたりで五竜岳、鹿島槍ヶ岳の風に乗って雪が舞ってきた。これは北アルプスの空に降る雪・・・。
御在所岳の雪にしか降られた事がない私にはとても貴くてもったいない。両手を広げアルプスに降る雪を体中で受け止める。五竜岳の神様に禊れている気分で幸せ。
丸山ケルンあたりでバフアリンを飲んだが少しも効いてこない。頭がズキズキする。何度高山を経験しても高度に馴染めず頭痛に悩まされる私。気力と足だけでは山は歩けない。もっと強くならなくちゃ。
下の樺あたりでスキーに苦労している女性。「板が雪に潜ってゲレンデのように滑れない。」と言っている。ヘッピリ腰になって体もこわばっている。
私たちに出会ってちょっと安心したようでゆっくり滑り始めた。やはり山スキーは相当経験を積まないと難しそう。


第三ケルン手前でそれまでは慎重に外手袋の取り外しをしていたのにザックの上に何気なく置いたらあっという間に吹き飛んで行った。下は絶壁。
まあ厳寒期でないし落ちたのが手袋でよかったけど・・・。車に戻るまで気を緩めてはいけないと不注意な自分を反省する。
八方池山荘手前で「ボーダーが雪崩で・・・。」と言ってスキー場のパトロール隊三人が急いで登って行った。ゲレンデをはずれると雪も危険な事が多い。
ゲレンデトップまで戻ってほっとする。山のスケールが違うので歩いても歩いても山の景色が変化せず最後まで気が抜けない。支尾根に迷い込んだら大変だもの。
朝同様、八方池山荘からリフト、ゴンドラで降りる。改めてこのスキー場のスケールの大きさを知る。北アルプスの山並みを眺めながら最高雪質で滑れてとても贅沢だ。ちょっとヨーロッパにいるような気分になる。行ったことないので知らないけど・・・。
頭痛は、降りたら随分楽になった。
駐車場で午後三時少し前。山頂まで行っていたら五時近くになっただろう。池山荘を朝早く立っていれば、又風がなかったら行動に余裕が持てたかな。
時間がない我々のせかせか歩きでは尾根上部で引き返して丁度よかった。次回は風のない穏やかな日に山頂を目指したい。
鹿島槍ヶ岳の裾の青木湖は全面凍っていたが、すぐ隣の木崎湖に氷はなかった。
大町温泉「十郎の湯」。¥600
安曇野からは右手に常念岳や大天井岳、燕岳などの白い峰を眺めながらアルプスを後にする。スキー帰りの車が多く豊科まで出るのに渋滞で二時間かかった。
豊科インター手前の犀川に見事な翼の白鳥数羽。まだ渡らないのかな?
今日は時間と天候(風)を考え山頂は踏めなかったが雪の北アルプス唐松岳初体験。壮大な景観とアルプスに舞う雪と尾根の雪に畏れを感じながらもその美しさに魅せられた。
そしてなにより八方尾根の「サクサク雪」を歩き、北アルプスの雪を知ることができて幸せ。


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