北岳バットレス

          3193 (山梨)
KITADAKE

2009年8月14日 くもり時々はれ

大樺沢からのつづき。

小屋3:40〜bガリー大滝6:10〜4尾根取り付き9:30〜終了点・13:30〜北岳山頂(14:30〜14:45)〜肩の小屋〜御池小屋17:15

夜中、星が空一面に瞬いていた。快晴。無風。昨日、八本歯まで歩いたので高度になれ頭痛はない。体調はいい。
ワクワクする気持と、行けるかなと言う不安が交錯して複雑な心境。
昨日歩いた道を大滝へと進む。ガレ場に大きい石のある沢を右に入る。でかいザックの若い人、空身の女性が「このあたりから入れば行けるよ。」と沢を詰めていく。後からもう一人。


大滝についた。我々と同じく昨日断念した東京6人グループも到着。しばらくして若者二人。今日4尾根に向うのはこの4パーテイー。
クライミングシューズに履き替える。我々はルートが分らないので一番後から行くことにする。前3パーテイーが準備をして進むのを待っていると丁度一時間経った。冷え性の私はすっかり体が冷えてしまった・・・。


bガリー大滝、登攀開始。
岩は乾いている。垂直に見えた壁はスタンスがいっぱいあり登りやすい。テラスより少し上まで進む。

2ピッチ目はやや緩やかな傾斜。その後は登山靴に履き替えて、左へ草の中を進む。ハイマツに沿って少し降るとcガリーに出た。前方の尾根が4尾根らしい。微かな踏み跡道が見えて進むと先行の6人がいた。「ちょっとここは無理。先の3人は行ったけど・・・。」と降りてきた。我々もcガリーに戻る。

岩を良く見ると「4尾根↑」と「↑」の赤いペナント。ガリーをつめると、しばらくで「4」のペナントを見つける。
ここは取り付きすぐ下の岩のようだ。濡れてヌルヌルしているスラブ。インクノットで確保して二人同時に上がる。ハイマツを抜けると広いテラスに出た。

ここが4尾根の取り付き。再びクライミングシューズに替える。前の6人の登る様子を良く見るとクラックにうまく足をジャミングしている。
ガスがかかってあまり暑くない。風も穏やかだ。アミノバイタルゼリーと水分を補給する。
いよいよ北岳バットレス4尾根スタート。



1P。
クラックに足を入れるがなかなか決まらない。岩は花崗岩ではないので滑る気がして思い切れない。左の壁をプッシングしたりしがみついたりしてどうにか通過。その後は緩やかな斜面が続いてスタンスもしっかりある。

2P。
最初のハーケンにカラビナがかからないようで、トップさんはシュリンゲを通してそこにビナをかけて進んだ。
怖くて使えない何年前の物か分らない古い残置シュリンゲがいっぱい。階段状のフエースで緩やかな傾斜を登る。

3P。
ピラミッドフエース右に白い岩を登る。スタンスがいっぱいあって気持がいい斜面。

4P。
たぶん楽しく行ってしまったのだろう。良く覚えていない。

5P。
目の前に5mの垂壁。左に細いクラック。緩やかなスラブに滑りそうになりながらも、小さいスタンスを見つけて立つ。壁の右のガバを持って出る。きっとここが今日の核心部。
目の前にはマッチ箱。リッジだ。岩の尖がりを歩く。両側はスパッときれ落ちている。何もない。高所恐怖症の私は目の前の岩だけを見る。「下を見るように。」指示が飛ぶがそんなこととてもできない。目が回るに決まっている。


マッチ箱のコル到着。
ふ〜っ。大きく深呼吸。
前の人がコルへの懸垂下降の準備をして、エイト環で降りて行った。残置シュリンゲとカラビナを使って。下をのぞくとコルなんてないように見えるが・・・。はじめに夫、そして私。10mをプルジックなしでルベルソだけで降りる。下の手は絶対離さないように。何もないように見えたがコルはちゃんとあった。
最後にトップさん。体がふわふわ風船のように弾んで降りた。めちゃ楽しそう。
ホッと一息、キャラメルを口にする。前がつんでいるので小休止。



6P。
つるつるしたおばれみたいな岩。スタンスが小さすぎて思い切れない。右端を行くとどうにか登れた。

7P。
小さいテラスから、右の尾根へ戻る感じでスラブを行く。四角く切り取ったような岩が横たわっている。スタンスが小さいので慎重に選びながら足を置く。



左の凹角部へと進む。コーナークラック。チムニーとリッジが混じった様な感じで、楽しく登ると枯れ木が現れた。木を持たないようにしてテラスに出る。

右前方を見ると中央稜の岩がどーんと聳えていた。すごい迫力だ。よく見れば上の方に黄色のヘルメットが・・・。随分下には青の・・・。それは、朝、二番目に大滝を登って行った若者二人だった。なんてすごい所を登っているのだろう!足元少し下を見ると残置シュリンゲ。ここから懸垂下降したらしい。

下を見れば、ガスが時々空いてマッチ箱に人が見える。大樺沢の雪渓も目に入る。山が大きいので高度感が桁違いだ。でもガスっていたのでほとんどそれを感じないままここまで来た。


8P。
壁がせり出して出張っている。傾斜はきついが岩はしっかりしている。その後はスラブ状。楽しく歩くていくと突然大きな割れ目が現れた。これもクラックと言うのかな?横に切れ落ちた岩の隙間。どこで渡ろうかな?広すぎて、私の足では飛べそうにない。右端まで来てやっと飛び越える。
楽しく最後のスラブを歩いて終了点。ここは自分でハーケンを打ったそうだ。そういえばハンマーの音が聞こえた。自分で打ちつけたハーケンを4尾根に置いて行くなんていいな。


北岳バットレス4尾根登攀終了!時間は13:30 前のパーテイの待ち時間があるので予定通り。
高山病にも、熱中症にもならなかった。足を滑らすことも、恐怖感で動けなくなることもなかった。まったくもって最高のできばえ。

ハイマツに囲まれたテント場て登山靴に履き替える。何もかもから解き放たれる。緊張がほぐれ、心は次第に達成感で満たされる。はじめて岩の世界を歩けた喜びが全身を駆け巡っていく。「やったー!」
ずっと憧れていた北岳バットレスに自分の足跡を印せたなんて信じられない。長い時間をかけてやっとここへ来れたんだって思うと胸がじーんとした。もちろんお世話になったトップさんに深く感謝して・・・。
山頂へはもう少し。空を仰ぐとほんの少し青空が!


北岳につづく。
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