北岳

          3193 (山梨)
KITADAKE

2010年8月12日 雨

自宅13:30〜岐阜(R21)〜各務原(R19)〜権平衛トンネル(R361)〜伊那〜高遠〜戸台口P(伊那市長谷)18:30〜仙流荘(温泉)(車中泊)

台風と前線の影響で小雨が降っている。昨年より駐車している車が少ない。

2010年8月13日 くもり

戸台口6:00発(南アルプス林道バス)〜北沢峠(6:40〜7:00)〜広河原8:15〜白根御池小屋11:15(テント泊)

ザックの重さ、夫24キロ、私14キロ。水2リットルと登攀道具が重い。
北沢峠に降り立つと肌寒いくらい。気温12度。カッパ上衣を着る。
クリンソウが咲いていた。大抵の人は仙丈ケ岳か甲斐駒ケ岳へ登って行った。山梨県側、広河原から来るバスを待つ間、寒くて、あちこち動きまわる。


広河原行きのバスに乗り換える。未舗装の道を降る。

広河原着。
相方は、決まらなくなったストックにテーピングして?出発。新しくインフォメーションセンターができていた。
つり橋から望む北岳山頂はガスっていた。少し下に雪渓が見える。

広河原山荘から急登が始まった。大樺沢への分岐を分ける。樹の根や、滑りやすい丸太の階段にあえぎながら進む。

普段、水泳で鍛えて見えるN根さんは足が速い。相方はいつになく苦しそう。アミノバイタル、塩飴、ブドウ糖などでエネルギーを補給する。
時々現れるベンチでもたれ休み。なぜか私も体が重い。原因は昨夜の温泉かな?山へ行く前に温泉に入るのはよくないと聞いていたけど・・・


「あと30分で小屋」の案内に、元気が出てきた。
剣岳の早月尾根ほど急登だった。

白根御池小屋着。
ガスが湧きあがってバットレス4尾根が目に飛び込んできた!マッチ箱がくっきり。切れ落ちた懸垂下降地点もはっきり。

テント設営。
夜用に着替えて、濡れたものや寝袋を干す。
アタックザックに、ヘルメット、ハーネス、ロープなど登攀道具と、食料、水などを入れて明日の準備OK。

二時ごろにテントを出発したいので早めの夕食。
山で胃腸が過敏になる私は、ごはん(アルフア米)梅干し、ミニトマト、味噌汁。
他の人は小屋特製カレー。二杯お代わりした人も・・・
明日の行動を打ち合わせて日没とともに休む。
天気予報はくもりときどきはれ。

夜中、雨の音が大きい。

2010年8月14日 霧雨のちくもり

小屋テント2:00〜bガリー大滝取りつき5:20〜大岩7:00〜二俣8:00〜小屋8:30〜広河原山荘12:00〜広河原(12:25)〜戸台14:00〜仙流荘(温泉)〜駒ヶ根(食事)〜駒ヶ根IC16:00〜自宅19:00

一時起床。
霧雨が降っている。ヘルメット、ハーネス、ヘッドランプをつけて出発。真っ暗な道を二俣から大樺沢へ。霧がかかってあたりの様子がわからない。
突然ビバークしている人のランプが浮かび上がってびっくり。「今日のピラミッドフエースは無理かな」とあきらめた様子。この場所なら取りつきにも近いし、八本歯から降りてすぐ撤収できるのでいいね。

bガリーへの大岩がはっきり確認できない・・・ここにもテント。
沢沿いに道を辿る。見覚えがあるガレ場やバットレスという文字を見つける。
北岳の岩はぬるぬるして滑りやすい。ちょうど藤内沢を登る感じだ。

稜線に出た。尾根を辿って取りつきへ。そこにはでっかい雪渓が残っていた。たしか去年はなかった。
残雪は毎年同じではないようだ。中央稜も多いかも・・・
先に行った相方は雪渓を潜り抜けた。突然、ものすごい音がした。シュルンドへはまり込んだのではないかと呼ぶが、返事がない。シュルンドで亡くなる話を聞いたことがあるので、心臓が止まったが、それは落石だった。返事をするか、「ラク」と言ってよ。

下のN根さんから「今日はここまでにしよう」という声。岩が濡れているし、小雨も降っているし、風もある。こんな日に行っても危険だし、楽しくない。


撤退は決まったが、足元がガラガラと崩れて危ない。
さらにシュルンドにはまりこみそうなので懸垂で降りる。それには「ハーケンを打ち込まなくては」と岩壁をさぐる。脆い岩は音も鈍いし、打ってもすぐ崩れた。ハンマーの音が澄んでいると、ハーケンが決まった。「ハーケンのあごまでしっかり打ち込む」
二本打って、シュリンゲを通し、内側は流動分散にする。片方のハーケンが抜けてもいいように。それにロープを通す。
私は傍で見ているだけで何もできない。脆い岩に一本のハーケンを打つのがどれだけ大変かを知った。岩を読まなくてはならないので、ちょっと私ごときには理解できない厳しい世界。

立ち止まっていたので、体が冷えて手がかじかんで来た。低体温症になるよ。フリース上衣に着替え、濡れた冷たい皮手袋に手をいれてクライミダウン。
最初の人はルベルソで、ロープを肩に持って降りた。ロープを下に置くとロープ自身が落石を起こすから。

私はプルージックと長めのカラビナ。すぐ後から登ってきた人に教えてもらったやりかたで。こちらのパートナーはホンちゃん初めての若い女性。「寒い」と風を避けて岩壁で震えていた。その次の二人も「どうするかな?」思案顔。

昨夏のトムラウシ遭難事故が理解できる。夏なのに手がかじかむとか寒いとかいう非日常の感覚。夏山では天気次第で凍死も起こりうることを体感する。歩きだすとやっと手が暖かくなってきた。


前のM大学山岳部も「撤退しました」と降りていた。
大岩あたりまで来ると「一般登山者が入り込んで来て、道が違うと教えた」らしい。
何の案内もないので無理もない。迷う。霧雨で視界が悪いから特に。
大岩にビバークのツエルトが増えていた。ここで天気の回復を待つようだ。
一緒にどうぞと誘われるが我々は撤退する。


二俣。
今年は雪が多いと通行不能箇所が示された案内板があった。
雪渓が大きい。悪天なのに広河原からはどんどん人が登ってくる。肩の小屋へ向かう人もいる。


御池小屋に向かう道はお花畑。
センジュガンピ、シシウド、シモツケソウ、フウロソウ、・・・


草すべりを人がいっぱい登り降りしている。ほとんど垂直だ。

テント撤収。
ある程度水をふき取ったが、ずっしり。相方のザックは帰りの方が重いかも。
降りも滑りやすい丸太階段は慎重に。


広河原山荘。
案内所前には山梨交通のバスが並んでいる。

我々は長野県側のバス。12:25にすぐ乗車できた。


北沢峠。
帰りのバスの連絡はいい。待ち時間なし。
ヨツバヒヨドリ草にアサギマガラが飛び交っていた。
北岳山頂まで行った人の話、「稜線では風速二十何メートルとかで立っていられず、山頂にはいけなかった」
我々も行っていたら、マッチ箱で吹き飛ばされ滑落していたかも。途中で懸垂下降するにしても相当危険だろうし。

仙流荘。
汗を流してさっぱり。

駒ヶ根で反省会の食事。
「山は無事に帰ってこそが一番。バットレスはいつもそこにあるのだから」
今回、前線の影響で台風一過とはならなかった。でも去年に次いで、取りつきまで行けてよかった。天候には恵まれなかったが、非常事態の貴重な経験ができた。行動時間は10時間を超えた。
残雪の状態は毎年違う。ボルトが雪に埋もれていた今回、セカンドはどこでどうやってビレイするのだろう。ピッケルも持ってないし・・・

追記。
新しくハーケンを打ち付ける。またはすぐ上の支点を使うらしい。

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