北穂高岳
    
3106m(長野、岐阜)

KITAHODAKADAKE

2005年5月3日 晴れ

起床3時〜涸沢テント発5:00〜(北穂沢)〜ゴルジュ上の岩6:00〜北穂高岳(7:30〜10:30)〜(北穂沢)〜涸沢11:30(テント泊)



朝方は気温が下がって少し肌寒い。
朝食インスタント味噌汁にサトウの切り餅2個。梅干。黄な粉ドリンク。
快晴。風はほとんどない。
12本アイゼンをつけてピッケルを持つ。カッパ上下、スパッツ、冬用帽子と手袋。
ザックは救急用品、食料(パン、ソーセージ、チョコ、ういろうなど)お茶、スポーツドリンク、ツエルト、ザイルだけ。私のザックに入れて夫が背負う。私は空荷。
奥穂高岳の峰、涸沢岳、涸沢槍、北穂南稜、北穂高岳と山がピンク色に染まり始めた。美しいモルゲンロートだ。これが春の穂高の朝焼け。
御在所岳のモルゲンロートしか知らない私はあまりの美しさに放心状態。見惚れる。


催促されてやっと我に返る。涸沢から北穂沢をダイレクトに山頂を目指す。
涸沢小屋右手から北穂山頂に向ってまっすぐトレースが付いている。空には雲一つない。雪は締まって固い。歩きやすい。しかしいきなりの急登。すぐあえぎながら登ることになる。
広島の親子と一緒になる。中学生かな?
「こんな山にお父さんと来れていいね。」と言うと、「昨日は痛かった。」とサングラスをはずし日焼け痕を見せてくれる。赤くなった頬は君の勲章だね。きっと大人になってもこの穂高のこと忘れないだろうね。
彼の心とお父さんの思いが痛いほど伝わってきた。ほほえましい。



カールにまで日が射してきた。涸沢のテントが小さく見える。紺碧の空に穂高の峰々が輝いている。
北穂沢中ほどの岩で休憩。正面の前穂高岳北尾根が朝より低くなった。朝日に輝き美しい。
空が黒いような青色。群青色。
ここからは広い緩斜面になる。緩やかに左にカーブして登る。その後又急斜面になってきた。
大きい松なみ岩と北穂山頂との狭いルンゼを登る。コルへの最後は急傾斜。一歩一歩慎重に登る。
二ケ所雪の割れ目があって危ないので落ちないように離れて通る。
右前方東稜のゴジラの背を登る人がいる。すごい。
コルにつくと前穂高岳にカメラを構えた人二人。傍にテント。すごい。
下からずっと目標にしてきた松なみ岩が目の前にある。岩の横に涸沢岳へと縦走していったらしい人の足跡。この人もすごい。
ここから眺める前穂高岳が美しい。岩の間から見れば、反対側に白く大きい笠ケ岳。


右に少し登ると北穂高岳北峰山頂。「やったー。」
南岳の彼方に槍ヶ岳が黒くそびえる。それに続く北アルプスの白い山なみ。松なみ岩から涸沢岳、奥穂高岳に続く峰の間にジャンダルム、右に滝谷。
巨大な黒い岩の世界と見事な白い山なみのパノラマにしばし言葉も出ない。これが春の穂高。美しすぎる。
東稜から先ほどの彼が到着。最後のリッジ手前は懸垂下降で来たとか。一人でそんな事が出来るなんて・・・
「初級ですよ。」と軽く言う。「リッジが好きなんで・・・」頼もしい若者だった。
小屋からキレットに降りる人がいる。クライムダウンの後ろ向き。一歩間違えば滑落する。一歩一歩確実に慎重に行った。
見ているだけではらはらする。ここから槍ケ岳まで6時間とか。そんなこと、よほど穂高に通わないとできないだろうな。この時期に槍ケ岳への縦走なんて。南岳から来る人も目に入る。
小屋テラスで北アルプスに通い慣れたAさんにお会いする。高山から北アルプス日帰りが出来るという恵まれた環境の方だった。うらやましい・・・



十分北穂高岳山頂を楽しんで「あの急斜面を降りるのは怖いな。」と下りが心配になってきた。
朝とは打って変わって雪が解けてグサグサ。ピッケルをしっかり刺して一歩一歩慎重に降りる。腰を伸ばして、片足に体重をドンとかける。この冬、御在所岳で練習したとおりにできた。緊張で足がつりそう。
先日の宝剣岳の怖い体験はちゃんと次へのステップとなっていた。今日は泣かずに降りる事が出来た。やったね。ほんのちょっと成長したらしい。
中ほどは雪滑り。
下では初めてグリセード。
東稜から来た山の研修生に教えてもらう。先生と生徒10人ほどの中の紅一点の彼女に。同年の男子と同等かそれ以上のことができるなんて尊敬する。私も彼女のような年頃に行きたかった。山に・・・ 


アイゼンをはずす。靴で急斜面を滑り降りる。ピッケルでブレーキをかけながら・・・
初めは少し膝を曲げて、慣れたら立って出来た。バランスを崩すと後ろに転ぶ。スケートのようなスキーのような不思議な感覚。楽しい・・・
北穂沢の下りはわずか一時間。
涸沢カールに降りるとそこはまるで初夏の様。風もなく光が満ち溢れ明るく輝く白い大地。どの人もこの美しい春山を満喫している。 


明日は奥穂高岳へ。

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