コクイ谷
    
(滋賀)


2006年1月21日 くもり

温泉最奥P7:00〜朝陽台9:00〜望湖台9:30〜(地獄谷・上水晶谷)〜上水晶谷出合10:00〜コクイ谷出合10:50〜沢谷出合11:55〜武平峠13:00〜P13:50


駐車場に車が三台と少ない。
Oさんにネットで買ったという、富山県芦峅寺(あしくらじ)の立山かんじきを見せてもらう。
立山と刻印されている。麻縄でしっかりした作り。つま先がややそりあがっている。軽くて歩きやすそう。サイズ大。私なら小かな?
駐車場に降りると雪が固い。締まっているよ。
新雪も降ったかな?という程度。薄化粧の山を眺めながら行く。気温が低く硬い雪の上を歩く。こんな日は雪崩の心配もないよ。
締まった藤内沢の雪はきっと気持ちいいだろう。三ルンゼアイスクライミングの真似事もいいし・・・。
冬はいつも藤内沢から本谷というワンパターンの我われ。でも今日は、冬のコクイ谷。
小屋が見えるザレ場で、デジカメのシャッターが下りない。気温が相当低いようだ。
キッレトから望むと富士見尾根下の岩に薄雪がついている。美しい。
木の階段下、右ルートがすっかり登山道。こんな固い雪は「岩と同じでそっと一回で足を置く。」といいそうだ。
凹角部。薄雪の被った岩を慎重に。
富士見岩下。空気が澄んで空が澄んで周囲の山がくっきり鮮明。今日はなんと視界が利くのだろう。御嶽山、乗鞍岳。その左に穂高岳も。
遠く南方には蒼い峰々が連なって見える。「仙ケ岳の向こうにあんな山があったかな?高畑山か大台ケ原のほうかな?」
(後から家で調べてわかったのだけど)
南方は高見山や大台ケ原、吉野の釈迦ケ岳あたりまで見えたようだ。


雪がなければ誰も歩かないガレの右。すっかり登山道になっている。そのまま富士見岩へ。尾根の硬い雪が気持ちいい。
岩からは下の岩場で見たより白い峰が一段と鮮明だった。穂高岳のすぐ左に双六岳や黒部五郎か?さらにその左に三角に見える笠ケ岳。大きい白山は釈迦岳の真上に聳える。
御嶽山からずらり一直線上に並ぶ美しい白い峰に感動する。
御在所岳山頂でこんなにはっきり周囲の山が見えるのも冬ならではの事。富士山はわからなかった。


朝陽台の大岩からケルンへ。
人工の氷ばくが少し融けた。いつも不思議だけどなぜか蒼い氷。どうしてか教えてもらってもすぐ忘れる・・・。
カモシカセンター前で上下カッパを着る。
遊歩道からは鎌ケ岳や鎌尾根、仙ケ岳など蒼い南の山を眺めて望湖台へ。
手前の尾根には落書きがいっぱい。ここは何にもない雪庇がいい。
望湖台。
風がきつく寒い。雨乞岳が凛とした冬の空に聳える。綺麗。白山から左手には霊仙山、伊吹山、貝月などの伊吹山地、西に比良の白い山並みがくっきり浮かぶ。間には琵琶湖が蒼い。こんな素敵な望湖台は最高。


記念碑前まで雪原をどこでも歩いて行く。というより駆けて行く。「わーい。」とはしゃぎながら。
Oさん、「そんなに走ると嵌るよ。あれ?嵌らないな。」冷え込んでいるので雪は硬くまったく嵌らない。超気持ちいい。待ってたよ、こんな雪。
記念碑手前から木の枝をかき分け地獄谷へ降りる。冬に行くのは初めて。
「キャホー。」一度足を踏み入れたら止まれないよ。急斜面を駆け降りる。誰も歩いてない固い雪面をどこまでもかかとをきかせて。
固すぎず柔らかすぎずはまり込まない雪って最高。冬、この谷がこんなになるなんて誰も知らないよ。まるでカモシカにでもなった気分。一気に駆け抜ける。



夢中になって雪を降りていると、あっという間になめ滝。ここまで二十分ほどかかったかな?滝の淵が凍っている。滝右側を慎重に降りる。
地獄谷分岐。
谷の岩に綺麗な氷がついている。このあたりも固い深い雪。谷なので風がなく寒さは感じない。
木の根の周りが丸く雪融けして春みたい。先ほどの楽しい雪下りの興奮状態が続いて、ハイな気分のまま小休止。草もち。チョコ。
冬、ここに来れる人はいないのか、そこからもトレースはもちろんない。沢沿いに夏道通しに行く。木に巻きつけられたテープは思ったより目に付く。
夏でもよくわからなくなるので、冬なんてとんでもないと思っていたけどこのあたりは大丈夫。誰も歩いていない樹間の雪面をそれぞれ自由に歩く。静かで開放的で超気持ちいい。
ふた筋の滝の氷が綺麗。
雨乞岳、根の平分岐。
二つ岩辺りの氷も美しい。自然が作り出した宝石。透き通ってキラキラ光り輝く。ひらひらしたフリルのスカートのようで可愛い。比べようもないけどそれは他のどんな物より神秘的で綺麗。
たしか夏に来た時も玄武岩の青さに感動したこの谷。冬には冬で白い世界の中でこんな綺麗な氷をつけていたの?はじめて訪れた冬の上水晶谷。その美しさに感動する。いつまでもここにいたい・・・。


左に折れて雨乞岳を遠望出来るところに来た。樹間に一段と白い雨乞岳が目に入る。
ここからコクイ谷出合までの道、夏にいい感じがして好きだった。やはり「鈴鹿の上高地」と言われる雰囲気をどことなくなんとなく感じさせてくれる場所。今日はコクイ谷出合手前から愛知川の中を歩く。岩についた雪の上や淵を歩いてコクイ谷出合へ。
前方の愛知川上流は雪が少ない感じがするが、コクイ谷は多いように見える。出合で小休止。ここでパン一個、チョコ。
この雪に包まれた静かなたたずまいが何とも言えない。日本の原風景、冬バージョン。
心に深く沁み込んで響き渡ってくる何か、心の琴線に触れる何かがここにある。自分はこんな美しい日本に生まれてよかった、山が好きでよかったと思う瞬間が今。心身とも清清しくなって美しい冬の鈴鹿と出会えた幸せ感に浸る。
小休止の後、雪のコクイ谷を歩き出す。



雪と氷のついた岩をピョンピョン飛んで行く。雪が多くてへつったり川横の雪壁を乗り越えたりする。
この谷の滝にも綺麗な氷。水中の木の枝にシャンデリアのように大きい。水の中の氷花。流れに出来る氷の花を見るのは初めてなので感動する。自然はなんて美しいものも創造するのだろう。どの花も美しい。
黒谷手前の綺麗な淵にも氷。「綺麗綺麗。」
その上流の氷がさらに美しい。木の枝につきたてのおもちが伸びたみたいな形。大きい涙の様にも見える。面白いので気に入ってしばらく氷と遊ぶ。
こんな凍った岩陰では、すでにカワガラスが巣作りをはじめているとか。丁度バレンタインデーの頃に。その恋の季節がはじまるころ鳥の鳴き方も変わるそうだ。一番いい声になるのかな?鳥の声にも耳を澄ます。
黒谷手前で「木の枝シャンデリア」を見つける。これは今日の最高傑作。五つも六つも氷の花がついている。裾はフリフリスカートでサラサドウダンかシャジンの花びらがくるっと外に巻いてるような可愛らしさ。「面白い。」
黒谷出合。
谷と尾根が釜跡の平に出るところと似ているので以前ここで迷ったというOさん。そういえば何となく似ている。
その谷から降りたようなトレースあり。ここ黒谷も雪がある時の方が歩きやすいのかも・・・。


沢谷出合。
滝は凍っている。滝下をのぞくと大きいビー球がくっついたような氷。丸まるして透きとおっている。滝の真下から見上げたらきっと綺麗だろうな、あのビー玉氷。

釜跡の平。
夏にここまで来るとホッとする所。だけど今日はまだこの先の方が不安。
ここでピッケル各部名称の勉強。スピッツエ、ブレード、ピック、シャフトなど。
ここから沢谷峠まで谷を沢沿いに行く。私には夏でもわかりにくいところだが、雪があるとよけいわからない。
しばらくすると右の雪斜面をリスが駆けて行く。尻尾が長くてかわいい。オコジョみたい。反対側左斜面の御在所側へ走りぬけた。「リス見たの、はじめて。」Oさんも私も感動する。
木に巻かれたテープをよく見て歩くが、平からしばらくして沢が二又に分かれたところが最も迷いやすいと思われる。
沢谷峠。
峠もわかりにくいし、その峠からのトラバース道もよくわからない。斜面の雪に時々はまりこみながら一応夏道通しに歩く。トラバースして植林帯に急登する所がきつい。ここ登るの?って感じ。登山道を離れて植林帯右端沿いに行くと前方下にスカイラインが見えた。
武平峠。
雪はガードレールまである。車が通らない峠はひっそりしている。元気有り余っているOさんはここからさらに鎌ケ岳三ツ口谷へ。
私も行きたいけどもう足が限界。三ツ口の大滝は凍ってるよ。きっと。
藤内沢の氷と三ツ口大滝と三ツ口ダムの氷と犬星の滝と一日に全部見られたらいいね。欲張りかな?


我々はスカイライン道の武平トンネルを通り抜ける。三重県側に出るとワカンなど踏み跡がいっぱい。ここでも雪は締まって固く歩きやすい。
西多古地の滝が凍って綺麗。デジカメのメモリーを入れ替えてもらって(一枚目がいっぱいになったし、入れ替え方がわからなかったので)滝の氷を撮る。
表道と合流するところ、木柵を超えて急傾斜の固い雪面を下る。気持ちいい。今日の「おまけ」だった。
鳥居手前の大岩の上を歩いて、鳥居をくぐる。
三ツ口ダム湖面が半分凍っている。凍ってから水量が少なくなったのか水面から氷が浮いてアーチのようになっている。これも面白い。
山の家あたりまで来ると風がきつい。谷ばかり歩いていた我々は風知らずだったのかな?さっきまで風や寒さと無縁だったけど・・・

五・六年前、雪の中道から裏道をこわごわ歩いた日が思い出される。樹氷に感動し、その時はじめて厳しくて美しい冬の御在所岳を知ったのだった。それは昨日のようで随分遠い日のようでもある。
毎週来るようになって数年。多分あの日がなければ私は冬の御在所岳に通うことはなかった。そしてもちろん冬山の美しさにも気づかないままだったろう。
時が過ぎて、今日初めての冬の地獄谷コクイ谷。固い雪と岩の谷歩き。そこで流れに咲く氷の花に魅せられる。はじめて見る美しい氷花。私は又新しい冬の御在所岳の一面を知ってとても感動している。初めて樹氷に出会ったあの日のように・・・。


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