水平歩道 

        (長野)(富山)
KUROBE

2009年10月24日 くもり

扇沢7:30〜(トロリーバス)〜黒部ダム7:50〜内蔵助谷8:45〜黒部別山谷10:20〜白竜峡〜十字峡12:00〜半月峡・S字峡13:00〜仙人ダム14:00〜阿曽原温泉小屋14:50(テント泊)

下の廊下のつづき。

急斜面を降ると目の前に東谷のつり橋。一人ずつ渡るように書いてある。張られた足元の板が薄くて割れないか心配。そっと歩く。橋は大きく揺れるのでしっかりロープを持ってこわごわ・・・。左折して林道を歩く。その先には真っ暗な隋道。



外に出ると対岸に雲切谷の滝が白い。この道であっているのかな?ちょっと心配になるが、しばらくして眼下にダムが現れて一安心。

対岸のこの谷はきっと仙人ヒュッテからの仙人谷だろう。いつか歩きたいものだ・・・。

仙人ダム。
放水するその白い塊に圧倒される。作業をしている方の横を通らせてもらう。どっちへ行くのかと思う場所には案内板があった。仙人谷へのもある。
建物の中を通る。中は熱い。突然軌道が現れた。関西電力黒部鉄道のその軌道を横断して暗闇を進むと鉄格子みたいなドアから外へ出られた。すぐに宿舎らしき鉄筋コンクリートの寮を二棟越える。


「阿曽原」の案内にしたがって進むが垂直の険しい道になる。急登だ。再び「この道であっているのかな?」と不安になる。よく踏まれているから間違いないだろうが、方向音痴の私はぐるぐる回ると方向がさっぱりわからなくなる。時々検視路があらわれてそちらに進みそうにもなるし・・・。

岩壁に突き当たると、大きい「阿曽原」の案内板が現れた。道はあっている・・・。今度は急な降りだ。土がヌルヌルして滑りやすい。膝がガクガクして踏ん張りが利かない。
ゆっくり慎重に降りて行くとテントと青い屋根が見えた。着いた。阿曽原温泉小屋だ!14:50


約7時間の行動。小休止を数回、餅、パン、飴、アミノバイタルゼリーなどでエネルギーを補給した。
テントを張らなければならないので少しでも早く着きたい一心だったからか?後半、十字峡からの行程が早かった。大休みはしていない。

小屋下の広場でテント設営。早速温泉へ。(3時から4時が女性の時間でグッドタイミング。一時間毎で交代。)
無色透明。匂いなし。地熱で沸くそうだ。遠路はるばる歩いてきて温泉に入れるなんて有難い。ツアー登山者が多く芋こじ状態。この日小屋宿泊者は100人で布団一枚に二人とか言っている。

足が軽くなり、疲れもふっとんだ。温泉で心身ともにリフレッシュできて幸せ。
テント場中ほどでヘルメットをかぶった人が数名、動きが慌しい。ヘリの音も聞こえたような・・・。

お腹が空いた!荷物を軽くする為、食料はカップメン、パンのみ。なんか物足りないけど・・・。

風もなく穏やかな夜。空を仰ぐと星の数がすごい。ここ黒部では小さな小さな星までも懸命に輝いている。3時ごろ、流れ星二個。夜空に大きな光の落書き!二回とも願い事を言い終わるまでに消えてしまった・・・。数日前、自宅では見られなかったオリオン座流星群を黒部で見る事が出来て感激。

2009年10月25日 くもり

阿曽原温泉小屋4:30〜欅平(9:30〜10:01)〜(黒部峡谷鉄道トロッコ電車)〜宇奈月(11:25〜13:00)(温泉会館・昼食柏や)〜黒部13:30〜米原〜関ケ原〜自宅17:30

トロッコ電車¥1660+特別車両券¥360 温泉¥360

今日は、欅平までの水平歩道を歩いて宇奈月へ抜ける。間違いやうっかりミスは許されない。より慎重に歩こう。
朝、北斗七星、オリオン座を見上げながら出発。昂も綺麗に瞬いている。テント場端の「欅平」の大きい案内板から歩き始める。少し早く出発した人等のヘッドランプが暗闇に動く。
梯子などがある急斜面を登る頃、ライトが急に暗くなった。ここでポケットの予備電池と換える。暗くてよくわからないが右手は昨日同様断崖絶壁。足元が明るくなって安心する・・・。


5時半ごろになると少し空が白みはじめて、先行10人ほどのグループに追いついた。リ−ダーらしき女性から昨日、滑落事故があったことを聞かされる。S字峡あたりで15人ほどのガイドツアーの一人。反応もなく救助できなかったらしい。「お互い気をつけましょう。」

急に気分が重くなる。何時何がおきるかわからないし、絶対落ちないと言う補償は何処にもない。ただ各自が慎重に確実な一歩を積み重ねるしかない。
落ち葉が敷き詰められた道を「山をどう歩くか。」話しながら進む。「8時間コースなら10時間平気で歩けるよう鍛えてから来るべき。」「山は命が懸かっているから、人任せではダメだ。」うんぬん・・・。

昨日から単独行動の女性。足が速く身軽。要所要所で楽しみ、歩き方に無駄がない。話し方も理論的で、まるでイチローみたいにとってもクール。我々みたいに興奮してはしゃいだりしないし・・・。こんな強い女性に会うのは初めてなので「すごーい。」と感心する。少し見習おうっと。

オリオ谷。
黒部の夜が明けた。前方に、折尾大滝が見えてきた。滝を越えて堰堤下の隋道を潜り抜ける。谷の紅葉が朝日に鮮やか。


大太鼓。
岩壁をくりぬいた道が、太鼓のふちを回るように巻きこんでいる。足元はスッパリ切れ落ちて高度感たっぷり。ここで光がもう少し欲しかった・・・。途中、欅平駅の白い建物を見下ろす。


志合谷。
ライトをつけ、長いトンネルに入る。ぐるり回りこむ。足元には川の様に水が流れている。



トンネルを出ると歩いてきた水平歩道が目の前に見えるようになった。道は水平に付けられている事がよくわかる。


辺りの紅葉は一段と輝きを増し、黄金色の世界に迷い込む。


その後も小さいトンネルが三つほど現れ、気分は洞窟探検。出口は金色!目の前には岩が切り立った奥鐘山が大きく聳える。道は水平だが山のひだに沿ってぐるぐる同じような所をヘつっていく感じ。

紅葉はますます濃く美しくなる・・・。



谷あいから後立山の峰が見えはじめた。白馬か?薄く雪化粧している。右に目を移すと天狗ののぼり、不帰の剣、そして唐松岳。さらに尖った山は鹿島槍だろうか?


送電線と鉄塔が見えてきて登山道は下り始めた。水平歩道は終わって、欅平へ降りるようだ。ゴールは近い・・・。

左前方に連なる山は?きっと毛勝三山だろう。写真を撮って掘割道へ下ろうとして転ぶ。膝がガクガク。くたびれてきた証拠。それに朝露に階段や土が濡れて滑る。最後の土壇場で滑落はできない。体を階段に対し斜めにかまえ慎重に降る。


欅平駅着。
「やったー。」長野県から富山県まで無事辿りつきました。二日で合計12時間歩き続けました!長かったよ・・・。
とっさに、どちらからともなく手を差し伸べ握手。同士として、御互いの健闘を讃え合う。「ありがとう。よく頑張りました。」次第に心も身体も達成感で満たされていく・・・。

観光客にまぎれて奥鐘橋へ降りる。近くには猿飛峡遊歩道や名剣、祖母谷温泉などがあるようだ。

黒部峡谷鉄道。
最終章は宇奈月までのトロッコ電車の旅。いくつもの橋やトンネルをガタゴトゆっくり進む。前から来る列車はどれも紅葉を楽しむ観光客で満員。予約券がないと何時間も欅平で待たされる事があるようだが早く行動したので良かった。トンネル内には関西電力の鉄道トンネルがいくつもあり作業している人もいる。地下で全部繋がっているそうだ。


ダムの蒼い水を眺めながら長年憧れてきた「下の廊下」を歩けた喜びに浸る。それは黒部ダムからひたすら黒部川を見続ける旅だった。
町が見えてきた。なぜか雲に乗って空から下界へ舞い降りる気分・・・。


宇奈月到着。
黒部峡谷鉄道宇奈月駅に富山地方鉄道宇奈月温泉駅も隣接している。駅前は観光客で溢れていた。歩いて5分ほどの宇奈月駐車場へ回送された車を取りにいく。

市営温泉会館を紹介され宇奈月温泉の湯に浸る。無色透明。ご褒美は、駅前「柏や」で富山名物ますずし。

東海北陸道は紅葉ドライブの車が多かろうと、黒部から北陸自動車道で米原まで、さらに名神で関ケ原へ。車が少ないので渋滞にはまることはなかった。

おまけとして、車窓から雲のかかった剣岳を仰ぎ、防風林のある風景と日本海を楽しむ。天候に恵まれ、無事、長い黒部の旅が終わった。

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