前尾根(御在所岳)
    1212m
(三重)


2005年11月13日 晴れ

内小屋8:30〜前尾根下テストストン〜前尾根P6からP1(13:30)〜最後にP7(15:00)〜小屋15:10〜裏道登山口16:00

朝日が美しい。日向小屋の上あたりの紅葉がとても綺麗。シロモジの黄色で山がぱっと明るい。紅葉を求めて登山者も多い。



前尾根下テストストンはアイゼンをつけたK山岳会の人。足捌きがうまい。アイゼンをつけても早く体重移動している。まったくアイゼンを感じさせない動き。交差がうまい。丸でスピードスケートのトラック競技のよう。
わたしもテストストン左端で体重移動の練習をする。登山靴で。「おじょうずですね。」とTちゃん。
いつか一壁でIさんがトップデビューした時に会った女性だった。その時教えて見えたKさん。「いいんじゃない?」と私の体重移動についての感想。
お世辞とわかっていてもいい気分。「これが高い岩の上に行くとできないんです。高度に体重移動する事を忘れちゃう私です。」
P7。
人が多いから通過。P3の後に来ることにする。
KさんらはP6もP5も通過して行った。
P6。
私は凹各部手前から右に匍匐前進。腕とおなかで体重移動。今日はザックが小さいので背中が気にならない。前進はスムーズ。「ここが難関だ。」と思っていたのに問題なかった。
その後はチムニー。前回あまりにスムーズに行ったのでここを甘く考えていた?今日は背中を浮かすことをすっかり忘れていた。丸岩順調。
前回大変苦労した所がすんなり行けたり、楽だった所でつまずいたり。なかなか進歩が見られない。うまくいかない・・・。
P5。
一番上に来ると左にでこぼこの岩。右の岩に移る。左前にモアイ像のような岩が二つ。きれ落ちた岩を飛ぶ。楽しい岩。


P4。
前の人がストックを落とした。頭の上にストックが落ちてくるとはこわーい。気を取りなおし登り始める。少し北谷側に降りてから後は真っ直ぐ登る。登りやすい楽しい岩。最後は歩きやすいクラック。

ななし。
ここも楽しくあっという間に上り終わる。日当たりがいい岩なので小休止。ここでコーヒーを頂く。前尾根展望絶好の岩ですっごい贅沢。至福のひととき。
やぐらに人がいる。どうもKさんとTちゃんらしい。冬八ヶ岳の氷を上る為の練習とか・・・。
私もやって見たいな。八ヶ岳のアイスクライミング。
何でもやりたがる困った人・・・。


下から手袋をしてアイゼンをつけた人が上がって来た。フレンズとかいうのを腰にいっぱい持っている。手袋をして岩をどう持つのだろう。アイゼンも歩きにくいだろうに。きっと最高レベルの技術を身に着けた方々なんだろうな。
ななし岩から、P4を見下ろすと急傾斜に目が回る。見上げるのには随分慣れたけど、見下ろすのはまだまだ怖い。
P3。
先ほどの二人は右の北谷側へ巻いて行く。何も手がかりがないように見えるスラブ岩を登るルートがあるらしい。
私は真っ直ぐに取り付いて、北谷側に降りて深いクラック。少し入ってチムニー。背中を岩に押し付けて上がる。今日はザックが小さいので楽。左の岩に上がり右の丸岩に乗る。この岩も何度行っても難しい。アイゼン跡に靴を押し付けて上がる。
二つ岩手前のスラブ岩。はじめて登山靴で上る。かすかなアイゼン跡を頼みに・・・。
二つ岩の右岩上にカラビナがかかっていてそれを取るように言われる。「こわーい。」と言いながらはずす。右から回って岩を抱え込むようにして降りる。
先ほど、北谷側からスラブ岩をあがった二人がここでもう食事中。次の人達は二つ岩の左からいい顔をして上がって来た。夫々が夫々のレベルで登攀を終えていた。
藤内沢を見下ろすと一壁に沢山人が張り付いている。そして紅葉はウサギの耳、藤内小屋辺りまで降りて行った。御在所岳の美しい裾模様だ。


前壁ルンゼを慎重に降りてP7に戻る。
P7。
下のクラックを登山靴で上るにも慣れてハーケン左のクラックに右足を入れる。岩間の木の上まで行ってチェーンで自己確保を取る。P7は半分で終了。ここから懸垂下降。
ザイルを引き降ろす。あたりはなんとなく薄暗い。P7下で聞けば「3時」登山口あたりで暗くなると怖いよ。早く降りたい。足早に小屋へ。
裏道は登山者が多く、まだ登って行く人もいる。帰りどうするのだろうと心配してしまう。小屋ではのんびり休憩する人も・・・。
私は怖がりなので急いで登山口まで。まだ明るいうちに車に着いた。やれやれ。
今日は登山靴とクライミングシューズとの使い分けがうまくできないことを実感。この前なんでもなかったところがうまく取り付けなかったりする。
楽なことを体が覚えると、大変だったほうの事を体が忘れる。これも何度も繰り返しやって「違い」を体で覚えるしかないのだろう。





2005年11月17日 晴れ

菰野庁舎P8:00〜裏道P8:15〜小屋9:00〜藤内沢出合〜P7(10:00)〜P3(12:30)〜(中道)〜旧料金所P(14:30)〜裏道P14:45

朝、菰野庁舎から御在所岳を望む。朝日に輝く前尾根が眩しい。寒気が入って冷え込むといっていたが・・・。
今日は岩用の小さいザック。Hさんの指導でYさんと。どこかの小学校の遠足の列の後になってゆっくり進む。
ウサギの耳で柿の実を見つける。柿と前尾根。なんか似合わないけど・・・。


テストストン。体重移動に神経を使って二回ほど練習。装備をつけてザイルを振り分けて持つ。藤内は誰もいない。「今日はできるだけカラビナとか使わないで登るように。」が私の課題。
P7。
木の間から。下の木の根で自己確保。自分のザイルで一メートルほど残して駒結び。ワッカに二本のザイルをかけて安全環つきカラビナ。インクノット結び。ザイルをしめて確保。
Hさんが上る。ザイルを出す。「いっぱいです。」ザイルが張られる。Yさんが上る。
その間、下で待っているのが寒い。足がかじかむ。太陽の高度が低くなったので一壁でさえぎられて日があたらない。手足の指先がかじかむ。足のカイロが欲しいよ。
かじかんだ手では岩もしっかりつかめない。足も凍って感覚がない。冷たい木枯らしが岩の間を吹き抜けてとても寒い。
私の番。木の間から行くと三角の出張った岩。前どう行ったのかな?左足をかけても右足が上がらない。
ハーケンがあったのでそこにカラビナを掛ける。布をもって上がる。回収してそこに右足をかける。そのまま小さなバンドを右へ。
丸い岩。右手右足をかける。左手を押しつける感じ。確か前、難なく行ったのに・・・。え?上がれない。二、三回してやっと。
クライミングシューズが固くて滑る。冷え込んで気温が低いので靴底のゴムが柔らかくならないのだとか。
余りの寒さに、頭の中からすっかり「今日の課題」は消えていた。
P6。
ハーケンにカラビナ。インクノット結びで確保。チムニーは行かず外側をまっすぐ上る。
中ほどの丸い岩も取り付けず、カラビナをかける。持って上がる。はずす。その上多分チムニーの上になる岩。何にも手がかりがない丸い岩。ここも難しい。
その後の跳び箱岩。この前すぐ取り付けたのに今日は何度やっても取り付けない。寒くて体がこわばって、手もかじかんで動かない。
寒いと気持も縮こまる。「寒いと思ったらそれだけで負けていますね。」とHさん。「せーの。」で取り付く。
中ほどで両足をそろえ、左足を少し左上へ出す。上のマントルに手をかける。ここも滑る。
まったく体が言う事を利かない。動きが鈍い。気温が低いとこんなにも違うものなの?二週間前クライミングシューズで行った時は快適だったのに・・・。

手に振り分けてザイルを持って歩く。
P5。
下でザイルをそろえて出す。Yさんが持っていたカイロで時々手を温める。それぞれの岩を二人同時に上る。


P4。
私が先。風がきついので上まで行かず途中で私は左へ。ボルトがあって自己ビレイする。Yさんは右へ。岩の上に出ると風がきつい。だけど日が当たって暖かい。やっと生きた心地がする。お日さまさまさま。
ななし。
二人一緒に上る。P3の手前。風があたらない岩陰でパンを一個。空気が澄んで雪の被った白い御嶽山、白山が見える。空も青く美しい。これはすっかり冬空だ。
P3。
中ほどから左の藤内側へ行く。ここは初めて。何も手がかりがない平らな丸岩。ただ微かなアイゼン跡があるだけ。それに足を押し付けて反動で上がる。ほとんど引きあげてもらう。
それを越えると見た事がある丸岩。アイゼン跡はあるがなかなか難しい岩だ。クライミングシューズがまだ固く滑る感じがする。いつもの吸い付くような感覚はこの時間になってもまったくない。自分の足の感覚もない。凍っている。「せーの。」の掛け声で飛び乗る。
スラブを行って、二つ岩は右から。Hさんは二つ岩下の岩で確保。無事終了。
ヤグラから陽が差し込み眩しい。寒かったけど無事最後P3まで上れた。
P1辺りで、土の部分には8cmほどの霜柱があちこちに。どうりで手足が凍ったわけだ。
見ると木々はすっかり葉を落とし冬枯れの国見岳。山頂はすっかり冬だった。


中道を降りると富士見岩あたりで風がやんだ。手足にも血が通いだしやっと感覚が戻った。生き返った。
地蔵岩まで降りると紅葉が美しいキララ峰や鎌ケ岳が午後の光に輝く。伊勢湾もただ青くそれに続く大地も晩秋の色。
振り返れば御在所岳も秋の陽光に落ち着いた色。
ぐっと冷え込んだ今朝、手がかじかんで岩もしっかりつかめず、足も凍って感覚がなかった。日が当たらなくて寒く、冷たい木枯らしに吹き飛ばされそうになりながらも踏ん張って歩いた前尾根。
風があると体感温度が下がる。寒いと頭も体も働かず、動作も鈍くなって今までできたことも何もできなくなる。頭ではわかっているつもりだったが実際動けないことを今日体感した。歯がゆいけどそれが現実だった。
雪山はこの比じゃない・・・。こんな寒い日の岩登り体験で雪山の厳しさを再認識した私だった。



2005年11月27日 くもり

裏道登山口P7:45〜小屋8:30〜前尾根(P7〜P3)〜P1〜(裏道)〜小屋15:00〜P15:40


落ち葉が綺麗。拾いながら小屋へと歩く。薄黄色で五枚くっついた丸い葉のコシアブラ。黄色三枚のピカピカした葉のタカノツメ。下が真っ直ぐで葉が五枚に切れたイタヤカエデ、明るいオレンジ色のウリハダカエデ、赤ちゃんの手みたいな小さいコハウチワカエデ、丸くて切れ込みがないのでカエデと思わないヒトツバカエデ(マルバカエデ)など・・・。

今日は靴下を二枚はいてカイロを張ってきた。ところが17日より気温が高く暖かい。カイロは必要なかった。そのカイロの分だけ足が大きくなって靴の紐がきつい。右足が痛い。
テストストン。
山靴で練習。かかとがやや上がりすぎ、もう少し下げる。どれだけ下げたら滑るかわかるように練習するがよくわからない。足の置く所を決めたら動かさない。
P7からP5。数箇所確保なしでそのまま岩を歩いたりする。
P4。
少し上がったボルトで自己確保。流動分散。(均等過重)カラビナをボルト二個にかけシュリンゲをかける。内側を交差させ、カラビナ。これにチェーンをかける。長さは後から調節する。
ここでKさんらがアイゼンワーク。あっという間に通り過ぎる。それに見とれて私は解除する時に確保器を落とすというヘマをやらかした。運良く次の人の足元で拾われた。下まで落ちなくて良かった。
彼らに感謝しながら自己確保をはずして上がる。P4のピークは強風。藤内沢に吹き飛ばされそう。落ちないように足に力を入れて踏ん張って歩く。名無しの下まで降りてザイルを足元に置く。


すぐ前はあまりアイゼンに慣れていない人達だった。トップの人のそれが私の頭の上に来た。この人が落ちたらと思うと怖かった。
ここで右に逃げて追い抜いて行く。その前の若者二人もセカンドがアイゼンに不慣れ。登れなくて引き上げられていた。
私はチムニーを越える。その後の丸岩でいつもより足が上がらない。どうして?今日は寒いと思ってワコールタイツの上に二枚ズボンをはいてきた。これが原因?
二つ岩のスラブ。
ここで青空を仰ぐ。雲が流れて綺麗。前尾根から見上げる寒々とした冬空に魅せられる。左に中尾根と三ルンゼの間に奥又尾根。今まで余り目が行かなかったが良くみると迫力がある。スラブのわずかなアイゼン跡に立つ。
その後二つ岩の右へ上がる。右岩の高い所に流動分散で確保されている。先にザイル側をはずし、岩にかけてある流動分散のカラビナを右岩からはずす。左岩はさらに少し上がってはずす。シュリンゲを肩に掛け岩をかかえて降りる。終了。
今日は凍っているかもしれない前壁ルンゼへは行かない。裏道に出て、途中前壁を見上げる大岩に乗ってスラブの歩き方練習。膝を曲げてはだめ。後ろに反っても前かがみでもだめ。「膝に乗って歩く。」姿勢。
その後は美しい落ち葉の絨毯に秋を感じながらの散策。よんの橋手前北谷のミズナラの黄葉が美しい。透り過ぎる光が木々をより鮮やかに輝かせる。
今日の前尾根は先日17日より気温が高かった。手が温かいので動きが楽。でもズボンの重ね着のせいで足が思うように上がらず動きが悪い。岩に厚着は不要。
どこにどんな岩があるか少しわかってきたが、やはり上部に行くと体重移動を忘れている。テストストンと同じようには動けるのはいつのことやら・・・。
でも雪がつく前にもう一度前尾根を歩けて良かった。


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