猫又山
    2378m
(富山)

NEKOMATAYAMA

2006年6月4日 くもり  

3日 23時自宅〜(R365)〜木之本(北陸道)魚津2:00〜2:45片貝発電所取水口前(仮眠)4:00起床

4日 片貝発電所取水口前P4:30〜(林道)〜猫又谷への降り口6:00(猫又谷)〜稜線(乗越)9:30〜猫又山手前尾根10:00〜稜線(乗越)10:30〜(猫又谷)〜尾根取り付き12:30〜(林道)〜片貝発電所P13:30〜魚津14:10(北陸道)木之本16:45〜(R365)〜自宅18:00

今回は剣岳隣りの毛勝三山の一つ猫又山へ。
雪崩の心配がなくてしかも雪がたっぷりあるこの時期しか入れない山とか。何となく険しそうだけど私に歩けるだろうか?不安を抱えながら出かける。
片貝発電所第一、第二などを超える。巨木のある駐車場からさらに少し先の橋を渡って発電所取水口前に駐車する。少し手前でテントを張っているグループがあった。
仮眠。

四時前になると空が明るくなった。朝食はパン、バナナ、飲むヨーグルト。
雪上歩きだから足が冷えるだろうと冬用ズボン。日よけつき帽子。スパッツに手袋。ピッケルとアイゼンを持ってスタート。
無風。気温が低いと思えば川の反対側にすでに雪渓がある。
歩き始めるとすぐに林道は落石などでふさがっていた。雪融けのスケールが違う。道には雪があり、まわりの山や谷もまだ白い。
地図では猫又山は谷沿いに真っ直ぐ登るようだが・・・。初めての所は良く分からないので踏み跡があるか見ながら進む。
サンカヨウやニリンソウ、カタクリが目に入る。写真を撮っている暇はない。
やっと谷へ降りる道が出てきた。ここまで林道歩きに一時間半かかった。今からは谷を詰めるようだ。堰堤を越えて崩れた雪渓と雪融け水に見とれながら進む。



一面雪原。そしてはるか前方には稜線へ急登するらしい谷が目に入る。それは白出のコルへ登るあずき沢のよう。そしてここは丸で涸沢だった。
きっと穂高岳も雪融けが進んで今頃はこんな感じなのだろう。ホトトギス、カッコウ、ほかに聞いた事がない鳥などの鳴き声が谷に響き渡る。
雪面は所々デブリになっている。ボコボコ。そしてあちこちに雪と共に落ちたらしい冷蔵庫くらいの岩や雪の塊。こんなのに当たったら怖い、死ぬよ。
岩が雪面を落ち始める時はゆっくりで音もしないとか。気づくのが遅れるということだろう。きょろきょろしながらいかなくては・・・。
周りの山には残雪がへばりついている。朝だから雪面はまだ固く締まっている。足の指先がかじかんできた。これはまったく冬の感覚。足用カイロが欲しかった。
谷を降りてくる風が冷たく寒いのでカッパ上衣を着る。
二俣を右に。このあたりで後ろから若者を含む男性三人。すごく速い。あっという間に追いついてきた。地元富山の方で剣岳周辺が遊び場だそうだ。なんて贅沢!今日は三山を縦走するらしい。


急斜面でザラメ雪。滑るのでここで一緒にアイゼンをつける。そこから彼等はダブルストック。次に山スキーの男性一人。岡山から来たとか。あっという間に追い越される。スキーは速い。
追い越して行った彼等がどんどん小さくなる。最後の急登を前に急斜面で休憩しているのが目に入る。疲れたのか座り込んでいる。
この中ほどの急登がよほどきついのだろう。私も谷側の足を斜面にフラットに置いてピッケルを使って必死にジグザグ歩く。がなかなか進まない。彼等のトレースを使わせてもらっているのに・・・。夫はダブルストックだからと余裕の表情。
最後の斜面を直登。ほとんど垂直に思える。慎重に一歩ずつ爪先を蹴りこみながら進む。
やっと稜線乗越に辿り着く。
目の前には霞がかった剣岳。「すごーい。」その堂々とした峰を目にすると今までの辛さも何もかもすっかりどこかに飛んでいった。
稜線上の雪庇尾根に登るとさらに迫力満点。
左には後立山連峰。爺ケ岳、鹿島槍ヶ岳から五竜岳、唐松岳、不帰の剣、天狗の下り、白馬岳三山の峰が白く連なっている。霞んでいるがはっきりそれとわかる。
左に折れ猫又山ヘと向う。雪融けの笹を踏んで雪庇を登るとキスミレが群生していた。
花に見とれていると隣りに雷鳥のカップル。羽が白と黒のツートンカラー。夏の羽毛に生え変わる時期らしい。
雌は地味でよく見なければ台地と見分けがつかない。土を掘って座ろうとしているが卵を産むのかな?雷鳥の邪魔になるのでできるだけ静かにそっと立ち去る。
雪庇尾根を歩いて行くと平らな雪山が現れた。猫又山への最後の急登らしいがきつそう。夫だけが登って行った。
すると先ほどの山スキーの彼が降りてきた。山頂へは三十分以上掛かるとのこと。往復一時間以上。やはり時間が掛かりそう。
剣岳山頂もガスって来た。こんな所で迷っても大変だし・・・。五時間以上登りっぱなしだったので足が棒のようだし・・・。それにあの猫又谷の降りも普通にすんなり行くとは思えないし・・・。私達は手前のこの尾根を山頂とする。
しばし残雪の剣岳に見とれる。その時、剣岳下方の谷から雪崩れるような音がした。


彼はスキーで、我々は歩いて一緒に取り付いた稜線に戻り軽く食事。パン、草餅、ミニトマト。
直下は念の為ハーネスをつける。雪が融けて柔らかくなっているので慎重に一歩一歩降りる。
降りてみて改めて如何に急斜面だったかを思い知る。スキーの彼はあっという間に見えなくなった。
直下を過ぎてアイゼンスキー?で滑り降りたりグリセードしたりと楽しい雪斜面降り。大泣きした宝剣岳からいろんな経験をしてきたので少し進化したようだ。
二俣あたりで山を振り返れば稜線への雪渓あたりまでガスってきた。
朝降りたった堰堤付近で割れそうな雪渓に乗ってみる。氷水に嵌りそう。不思議なことにここの雪解け水は蒼い・・・。


尾根に上がろうとすると紫のキクザキイチゲが群生。綺麗。フキノトウ、ネコヤナギも。
尾根に取り付いて小休止。もう一度谷の雪渓を仰ぐ。足元をよく見れば何やら小さい芽がいっぱい。見事。先日鎌ケ岳で見たブナの新芽だった。こんなにくっついて芽が出ては生き残れないよ。
登山口までずっとキクザキイチゲ、ニリンソウの群生。カタクリの群生も見つける。そしてサンカヨウ。白く清楚な花が涼しげ。
最も登山口に近いあたりではイワウチワの群生、イワカガミも。
木々を見上げれば背の高いトチノキがいっぱい。その白い花はしゃんと空に向って逞しい。ホオの木の花もとても大きい。こちらは大木に数えるほど。花が少ない。
ブナの巨木は緑の葉を空いっぱいに広げている。瑞々しい新緑。遅い春に花も木も一斉に芽吹き成長するようだ。
ここでは鈴鹿の三ヶ月が一ヶ月に凝縮された感じ。深山に生きる植物の生命力に感動する。


駐車場の発電所取水口あたりまで戻ると山菜取りやハイキングの人がいた。
車は蒼い片貝川沿いを下る。その岸辺はピンクのタニウツギが咲き乱れていた。桐の花、ミズキなどと共に。
そして毛勝三山から流れる水をたたえるこの川はどこまでも蒼く澄んでいる。私は今までこんな美しい川の流れを見た事がなかった。
猫又山の雪と花と新緑とそこから流れ出る美しい雪融け水に出会えて幸せ。
次回は是非毛勝三山を縦走したい。


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