奥穂高岳
    3190m
(長野、岐阜)

OKUHODAKADAKE

2005年5月4日

起床2時〜涸沢テント発4:00〜(あずき沢)〜ザイテン取り付き5:00〜穂高岳山荘6:30〜奥穂高岳(7:30〜8:00)〜穂高岳山荘8:30〜涸沢岳9:00〜穂高岳山荘(9:30〜10:00)〜(あずき沢)〜涸沢(10:40〜12:00)(テント撤収)〜本谷橋13:00〜横尾14:00(テント泊)


二日間、奥穂高岳へと登る人を涸沢から見上げていた。ザイテングラード左のあずき沢をダイレクトに登ればいい。雪が締まった早い時間に登ろうとヘッドライトをつけて歩き出す。青黒い空に月。前穂高岳北尾根のシルエットが鮮明だ。
三十分もすると空が明るくなり、常念岳と屏風の間からご来光。真っ赤な太陽が昇り、東の空ををオレンジ色に染めた。厳粛で神聖な時間。最高の天候とこの荘厳な瞬間を穂高の神様からいただけたことに感謝し、思わず手を合わす。
広々したあずき沢を登りつめると奥穂の岩壁が迫ってきた。傾斜は昨日の北穂沢ほどなくなだらか。



そのうち雪壁の向こうが紺碧の空だけになる。空にも上る気分でダイレクトに白出のコルへ。穂高岳山荘テラスに到着。小屋は二階まで雪。
涸沢を見下ろせばテントが小さく、数珠繋ぎで人が登ってくる。
昨日南岳から来た若者「縦走くん」に会う。「キレットは怖かった。ガイドブックと実際は全然違った。」と縦走体験談。
昨日はここにテントを張ってこれから奥穂高岳、前穂高岳へ。岳沢から降りるらしい。「前に二人の縦走経験者がいて助けてもらった。一人なら戻っていた。」と感想の続き。「無事に帰ってこそですから岳沢も気をつけて。」と彼にエールを送る。



山荘前から奥穂高岳への急な登りにかかる。はしごの周辺に雪はなく、その上に雪壁が現れた。階段状になっているので、しっかりピッケルを利かせて慎重に一歩一歩登る。
背後には涸沢岳、北穂高岳、遠くに槍ヶ岳。
前方に奥穂高岳の黒い岩。その後雪は少なく緊張する箇所は後にも先にもはしご上の雪壁一箇所だった。


前方に山頂の祠が目に入る。手前につがいの雷鳥。穂高で白い雷鳥に会えるなんて夢の様。

右手に憧れのジャンダルムが姿を現す。手前に登山者二人。今から西穂高岳に下りるのだろうか?
奥穂高岳山頂。「やった。ついた。」
山頂で「縦走君」に追いついて握手。登頂の喜びを共有する。興奮と感動が交錯してハイな気分。
雪の付いたジャンダルムを見るのははじめて。なんと凛々しいのだろう。
彼(ジャン)に会えて言う事なし。
焼岳、乗鞍岳、御嶽山の峰も白く重なり合って綺麗。上高地が随分下の方。前穂高岳、明神岳も美しい。
馬の背、ロバの耳へと点々と足跡。その先に先ほどの彼ら。「すごい。私も行きたい。けど行けないよ。」

でも、いつかきっと行くから・・・
背後の槍ヶ岳は昨日の北穂高岳からの展望に北穂高岳と涸沢岳を加えさらに美しい。
最上級のパノラマ。


下りははしごのすぐ上の垂直雪壁を慎重に下りる。ピッケルをしっかり刺す。人がどんどん登ってきて大渋滞。こんなところで誰か落ちたらと思うと怖い。はしごは譲り合ってさらに慎重に下る。
泣かなかった。
小屋のテラスは人で溢れていた。振り返って奥穂高岳を見上げると、人が今にも落ちそうな斜面を行く様に見える。



山荘から涸沢岳に登る。雪はヘリポート辺りだけでアイゼンは全く必要なかった。途中ではずす。
山頂から涸沢槍はどれかなと見下ろしてもわからなかった。あずき沢から見るのとでは山の形が違う。
ここから北穂高岳までの縦走路も険しそう。私がここを歩けるのは何時のことやら・・・
慌てずしっかり基礎作りをしてからにしよう。
もっと強くなってきっと行くから・・・


あずき沢の下りはなだらか。
夫はほとんど上から雪滑り。その後に滑落訓練中らしい二人が横の壁にぶつかったりピッケルが飛び跳ねたりして危かった。ほとんど滑落状態。
見ていた私が怖くなり滑れなくなった。下の方で滑る。雪道が深く抉り取られてる。なんかこんなオリンピック競技あったよ。氷の道を滑り降りる。リュウジュだったかな?それに似ていた。
あずき沢の緩斜面ではグリセードは出来なかった。
テントを撤収していると、レスキュー隊員が下に乗ったままのヘリが北穂沢に向った。隊員が沢に下りるのも目に入る。すぐヒュッテまで戻り、ネットの中の人を機上に乗せ変え飛び立った。
沢で滑落。岩にぶつかって骨折したらしい。その素早い対応に驚く。
感動をいっぱいもらった涸沢に感謝して我々は横尾まで下る。
デブリも先日のまま。あちこちでグリセードができて楽しい。
登ってくる人は皆とても苦しそうなので、はやめに道を譲る。
本谷橋付近では三日前より雪解けが進んでいた。屏風岩から雪融け水が滝になって流れている。
ケショウヤナギがやっと萌黄色、春まだ浅い感じの横尾でテント設営。初夏の様なので木の枝やテントで寝袋などを乾かす。涸沢とは随分気温が違う。雪がないもの。夜も暖かい。

2005年5月5日

横尾6:00〜徳沢(7:00〜7:30)〜明神8:30〜上高地9:30(平湯温泉行バス9:40)〜平湯バスターミナル10:15〜あかんだな駐車場(10:35〜10:50)〜平湯の森温泉(10:55〜12:00)〜高山〜(せせらぎ街道R158)〜郡上八幡(東海北陸道)(名神 )〜羽島〜自宅15:30


三日前に来た道を上高地へと戻る。フキノトウやネコヤナギが目立つ。
行きには気付かなかったエンレイソウなどの花が咲いている。穂高の事ばかり考えているから目に入らなかったのかな。
徳沢から明神の間にニリンソウの群生。淡いピンクの花が咲き出したばかり。梓川はどこまでも青く透き通って美しい。
河童橋から萌黄色の落葉松越しに見る穂高岳は残雪が多く春遠いイメージだった。
平湯に戻ると山のあちこちにコブシが白く山桜も咲いて雪国は遅い春を迎えていた。せせらぎ街道の落葉松も薄茶からうす緑となり、山は新緑に包まれていた。
春の涸沢、春山穂高岳に感動をいっぱいもらって帰途につく。

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