西穂高岳〜奥穂高岳
      2909m     3190m
(長野、岐阜)

OKUHODAKADAKE

2005年7月17日 くもりのち晴れ

西穂山荘4:00〜独標5:00〜西穂高岳6:45〜間ノ岳8:20〜天狗岳9:18〜天狗のコル10:15〜ジャンの手前・コブ尾根の頭?11:30〜ジャンダルム12:00〜ロバの耳?12:35〜馬の背13:00〜奥穂高岳(13:15〜35)〜穂高岳山荘14:00


朝ガスッている。岩が濡れて滑りやすい気がする。慎重に歩こう。
カッパを着てハーネスにザイルで確保。
ハクサンイチゲやキバナシャクナゲが岩の間に咲いている。辺りは何も見えない。
ただひたすら歩く。いつの間にか独標。西穂高岳山頂。今年正月に来た山頂は、標識が新しくなっていた。


いよいよここから未知の世界へ。白いペンキ印が多い。
間ノ岳の登りは赤茶けたルンゼ状の岩壁だった。こんな岩は歩いた事がない。岩がガスで濡れているので滑るような気がする。一歩一歩慎重に。
天狗岳の登りは逆層スラブとか遠くから見ていると崩れそうな赤い岩。いつも見ている御在所岳の白い花崗岩ではない。珀岩(ひんがん)?ここも緊張する。
天狗岳山頂。周りは真っ白の世界。何も見えないから高度感がない。植物もない。あるのはガラガラした岩ばかり。
急に空が明るくなってガスの切れ間から青い笠ケ岳が見えた。又すぐガスがまく。天狗の岩。左にぐっと巻き込む。
降りて行くと立派な標識。天狗のコルだった。
見下ろすと岳沢には雪渓が大きく残っていた。とてもここを降りることはできない。アイゼンやピッケルの世界だ。何も持っていないもの。その後も所々残っている雪渓が登山道右側に突然大きく現れてドキッとする。
振り返れば天狗岳にガスが流れて山頂が見え隠れする。
ドラマチック。


たたみ岩の頭。コブの頭で小休止。はるか前方に巨大な岩壁があらわれる。恐竜の背中のような岩壁。どうもジャンダルムらしい。


しばらく行くと中ほどに丸い山容の岩。
西穂高岳の独標の様な・・・それはやはりジャンだった。
奥穂高岳側から見るのとは様子が違う。ザックを岩の途中において直登する人がある。左にまくルートもあるようだ。
我々は右に巻く。慎重に岩場を通過する。振り返ればジャンダルムが背後にあった。いつのまにかジャンを通過していた。あっけない通過だった。物足りないような・・・


この辺りからガスが空いて青空が広がった。はるか前方に奥穂高岳が聳えている。とがった三角の山頂に人がいるのもはっきりわかる。
背後のジャンのガスも取れて行った。そしてその堂々とした勇姿を現した。
なんと雄々しく凛々しい姿だろう。目の前のジャンに圧倒されて目眩がする。
ここはジャンダルムと奥穂高岳の間の特別優雅な空間。これ以上の優雅さがあるだろうか。
こんなところに居られる私は最高に幸せ。



馬の背はナイフエッジの岩歩き。両側がスパッときれ落ちた岩稜。以前の私なら足がすくんで歩けないだろう。
確保されている安心感と、一壁上やテストストンなどの岩歩きのお陰で全く恐怖感を感じることなく気分爽快。


どんどん奥穂高岳が近づいてくる。方位盤のある岩に辿り着き、奥穂高岳山頂。「やったー。」
今歩いてきた、馬の背、ジャンダルムさらにその先西穂高岳に続く岩の世界を目の前にして感無量。言う事なし。
達成感や感動がごちゃまぜになって形容する言葉も見つからない。
自分の足で歩いてきた稜線の岩も雪渓も小さい花も他の何もかも愛しい。
「穂高よ。又新たな感動をありがとう。」


祠に上がって空を見上げる。蒼い空に虹がかかった。普通の丸い虹ではなくまっすぐな虹。彩雲?とか言ってる人がいた。色鮮やかな虹の帯。大空からも祝福された気がした。
時間が立つにつれハイで幸せな気分が体の隅々までしみわたった。これ以上素敵な時を刻んだ事はなかった。我々の後から来た人は二人だった。
高揚した気分のまま奥穂高岳を後にする。
小屋への道から、白い雪渓と緑に包まれた夏の涸沢を見下ろす。
ただ美しい・・・
この辺りからいつもながらの頭痛に加え、腹痛も。


穂高岳山荘到着。

ゴールデンウイークに登ったあずき沢にもカールにも随分雪が残っている。カールにはテントは数えるほど。

「ジャンから歩いてくるの見てたよ。すごかったね。元気もらったよ。」と声をかけてくれる人がある。
黄色のカッパが目立ったのだろう。ハイな気分の上に、少し誇らしい気分。好きなことをして、それで人に元気を与える事ができてうれしい。


そんなハイな気分とは裏腹に体調は最悪。バファリンを飲んでもなかなかおさまらない頭痛。吐き気も伴う。
やっと夕食時に回復。食欲はない。
いつも三千メートルの高度に耐えられない私。改めて体力のなさを痛感する。
気持だけが先行して山を歩いているようなものだから・・・
行動中もあまり食べれないし・・・
というか食べたくないし・・・
緊張して心にゆとりがないってことかな?
鈴鹿だとお腹も空いて元気なんだけど・・・
いつもながらもっと強くなりたいと思う。

幸か不幸かガスがあって高度感も恐怖感も少なかった。
険しい所にはしっかりしたクサリが取り付けられていた。そこでは焦らず慎重に進んだ。
岩が濡れていると滑るんじゃないかと構えてしまう。体はこわばるけど心は怖がり過ぎないようにした。
ガスがかかっていたからよけいにそう感じたんだろうけど、岩場がよく似た感じでどこがどことはっきり記憶していないのが残念。

所々に咲いていた花を小屋の本で見る。イワヒゲ、ミヤマタネツケバナ、シコタンソウ、ミヤマヤナギなど。
食堂にモノクロの写真が飾られていた。そこには人を寄せ付けない厳しい冬の穂高岳があった。
天気は快晴。梅雨明けかな?
明日はザイテングラードを涸沢へ。


     トップメニューへ
inserted by FC2 system