立山・剣岳
    3015m  2998m(富山)

TURUGIDAKE

2004年10月9日 台風22号 雨 Iさん 夫と3人

自宅13:00〜いなべ13:30〜(365号線)〜木之本IC(北陸自動車道)〜立山IC17:00〜(県道6号線)〜立山P17:45(車中泊)


台風のスピードが速いので回復も早いと判断し午後から出かける。トンネルの多い北陸道。日本海沿いに一路立山へ。立山駅前の無料駐車場に車を置く。タヌキが2匹駅にすみついていた。

立山駅〜室堂往復乗車券 ¥4190 (通用期間発売日共5日間)
(10月10日 06:40発) (前もって9日に買っておいた)

2004年10月10日 くもりのち晴れ

手荷物10kg以上、¥300

立山駅6:40(ケーブル)〜美女平6:47〜(6:55〜7:35)(高原バス)〜室堂8:00〜一の越9:00〜雄山(9:40〜9:55)〜大汝山10:20〜富士の折立10:40〜真砂岳11:40〜別山12:35〜剣沢13:30

小雨の中、ケーブル、高原バスと乗り継いで室堂へ。あいにく霧だがバスの中から望む弥陀ヶ原の紅葉は鮮やかだった。
室堂で雨のあがるのを待って歩き出す。立山の雄大さに感動し、室堂を見下ろしながら石畳の整備された道を一ノ越へと登る。一ノ越山荘前からは針ノ木岳や蓮華岳など後立山連峰が大きく見えた。
山すそは鮮やかに紅葉している。ここは風の通り道らしく吹き飛ばされそうだった。さぞかし稜線も寒いだろうとカッパを着る。ガスが出て、岩のザレ道を雄山へとあえぎながら登る。
三角点につくと一瞬ガスがあいて右下に深い緑色の川が目に入った。黒部川かな? 皆「わー」と歓声を上げている。前方に鳥居が見えて雄山頂上。



雄山神社本社からは鹿島槍ケ岳、五竜岳、唐松岳など後立山連峰、先ほど見えた深い緑色の黒部川、黒部ダム、オレンジ色のロープウェイを真下に望む。そのロープウェィ辺りや黒部ダムの紅葉が実に見事だ。
反対側に室堂とその向こうに奥大日ケ岳、大日岳を望みながら進む。こんな雄大なルートは今まで歩いた事がないので、感動と興奮を確かめるように一歩一歩ゆっくり歩く。
岩場の富士の折立あたりから剣岳の山頂が見えはじめた。立山とは雄山、大汝山とこの富士の折立の山なみの総称らしい。


急斜面を下りると真砂岳手前には雪渓が残っていた。このあたりの稜線は風がきついので足をふんばる。
真砂岳は起伏のない丸い砂漠のような山容だ。五竜岳や白馬三山に見とれながら進んでいたのでどこが山頂かわからず通過した。内蔵助山荘辺りらしい。続く別山への上りは長かったが乗越に出ると、なんと目の前に憧れの剣岳が大きく現れた。岩が天に向ってそびえている。威厳がありすぎて近寄りがたい感じだ。右のとんがった岩々が八ツ峰らしく、そこに光が当たって剣岳を輝かせた。
手前に今から行く剣沢を見下ろすと剣沢小屋やテントが2〜3張り見える。ザックを置いて右手前方の別山山頂まで歩く。
剣岳がさらに近くなって目の前に迫った。間違いなく剣岳だ。ずっとずっと憧れていた剣岳。こんな近くに全容が見られるなんて感動が大きすぎて言葉が見つからない。ただその堂々とした立派な姿を呆然と見つめるばかりだった。
八ツ峰に少し紅葉しているところがあるがあとはまさしく岩ばかりの山だ。長次郎谷の雪渓に時々陽が射して光った。


剣御前小舎の少し手前で剣沢に入り急降下する。左側に滑落しないように慎重に降りた。
沢からは剣岳がグッと近づき、日が暮れるまでその雄姿を見ることができた。今夜はこの静かな剣沢で剣岳に見守られてテント泊。夕食はカップ麺もち、生姜湯、チーズ、ソーセージ。
気温は高く寒さは全く感じない。小雨がパラパラした。夜中に空を見上げると天の川が見えた。剣沢で見る夜空は透き通っている感じがして改めて深山にいることを実感した。雪の心配はない様だ。

2004年10月11日 くもりのち晴れ

剣沢テント場5:30〜剣山荘6:00〜一服剣〜前剣岳〜剣岳(8:30〜8:50)〜剣山荘(10:45)〜剣沢テント場(11:10〜11:30)(テント撤収)〜剣御前小舎(12:10〜12:20)〜雷鳥沢テント場13:30〜みくりが池温泉(14:30〜15:00)〜室堂(15:20〜16:10)(高原バス)〜美女平16:50(ケーブルカー)〜立山駅17:00〜立山IC18:00(北陸自動車道)〜木之本IC〜(365号線)〜自宅21:00

朝食は味噌汁もち。サブザックにカッパ、食料、お茶などを持つ。朝もやの中ヘッドライトを付けて出発する。
剣沢小屋から剣山荘まではゴツゴツした歩きにくい岩の道。丁度涸沢の岩の上を歩いている感じ。剣山荘で剣岳の天気を聞くと午前は小雨、午後はくもりという。天気があまり良くないので行ける所まで行くことにする。
小屋からしばらくするともう岩が現れた。雨に濡れているので慎重に登る。青くて黒い感じの岩だ。
しばらく行くと一服剣、前剣岳、ガスで周りの景色は全く見えないのでただひたすら歩く。鎖場が出てきた。これがカニノタテバイだろうか?すんなりと通過。これではないようだ。ペナントをしっかり拾って進む。(最近覚えたばかりの山の言葉だ) アルミの橋を渡る。「剣岳」「頂上」というペナントが現れた。いよいよだ。慎重に慌てずに一歩一歩行こう。自分に言い聞かせる。
垂直の岩にピカピカの鎖が現れた。緊張で顔がこわばる。鎖が濡れているので手袋がすべる。しっかり持つ。岩をよく見て足の置き場を見つける。一歩進む。鎖を持ち替える。手を掛ける岩を捜し、次の一歩の足の置き場を探す。鎖場の中ほどで次の足を掛けるところが見つからない。
ふと絶壁の岩を登っている恐怖心が湧き上がって動けなくなる。強い風も吹いてきた。怖い。深呼吸して、もう一度心を落ち着けて足場を捜す。電柱によく付いている様なボルトが打ち込んであるのでそこに足を掛け、鎖をしっかり持ち直し、岩に沿ってゆっくり上に体を持ち上げると右手に平らな岩があった。ああよかった。そこからは先ほどのような垂直の岩場はなかった。
早月尾根の案内板があらわれ岩の道を進むと大きい祠が目に入った。「やったー。」剣岳山頂だ。
本当に山頂?辺りはガスっているのでしばらく信じられなかったが、先ほどの鎖場のあの恐怖感が体に蘇ってやはり剣岳山頂にいるんだという実感が沸いた。あれがタテバイだったらしい。


時々霧があいて空が明るくなった。青空ものぞいた。そういえば前剣で写真を撮りあった若者が来ない。鎖場で戻ったのかな? ガスが晴れないので山頂からの風景はあきらめて下り始める。
さて右も左も同じような岩場でどこから来たのかどこを下りていいやらわからない。こんなところで迷い込んだら大変だ。
ペナントをしっかり見て早月尾根の案内板まで戻るとここでやっと前剣の若者に会う。ルートをはずれ、違う岩場に迷い込んだらしい。「おかしい。」と気付き戻ったとの事。そのまま行ったら遭難?まあ無事で良かった。100名山でルートが分かりにくい山ははじめてだった。
下りの鎖場を行く。カニノヨコバイか岩に沿って足を横にずらして行く。その次のはしごが圧巻だった。20段ほどの垂直の大きいアルミのはしご。奥穂高岳にも槍ヶ岳にもこんなのなかったよ。慌てずにしっかり持っておりる。こちらは下り専用路。
この辺からガスがあき始める。あたりにはまさに剣のような岩々が見えはじめ、行きに歩いたルートが現れた。左右どちらかが切れ落ちた岩場の連続だった。あんな険しいルートを行ったのかと驚いた。
振り返るとそこには青空を突き刺すように剣岳の岩峰が黒く大きくそびえていた。早月尾根の案内板が白く光っている。その右あたりが山頂。私が最も怖かった岩も目に入った。ガスがあって周囲が何も見えなかった事が幸いだった。あたりの谷や岩が目に入ったら高度感に加え恐怖心はよりいっそう増したに違いない。ガスがあったから登れた。
剣岳の険しい岩場で、Iさんが用意してくれたザイルとハーネスの出番はなかった。


そこからは黒部ダムを見下ろし白馬岳、唐松岳、五竜岳を眺め、剣沢小屋を前方に見て、剣沢雪渓に真砂ヒュッテを見下ろす雄大な風景の中に身を置く贅沢な稜線歩き。
剣岳に登頂できた満足感が体中に満ち溢れた。剣山荘は今日で小屋じまいとか。今年最後の客となってお茶を買う。
無事にテント場に戻ってホッとする。テント撤収後剣御前小舎に向う。ガスが又出て肌寒い。小舎手前で雷鳥のつがいに会った。ここにも雪渓がありグッと冷えた。気温は7度。
雷鳥坂を室堂へと下りる。ウラシマツツジ?が赤いじゅうたんの様。雷鳥沢のテント場に続く地獄谷が白い煙を上げている。みくりが温泉の方へ登り返すと後ろに山頂部分だけ隠れた立山連山が秋のたたずまいで静かにそびえていた。白濁のいい湯で汗を流す。
立山で何回目?かのバースデイ。数年前は体調が悪かったのでとても今の自分は想像できなかった。「山」と出会っていつも「山」から元気をもらっている。ほかに何も望む物はなく単純にそれだけで「生きている」喜びを感じるこの頃。本当に山の魅力に嵌まり込んでいる私。
今回は美しい立山に魅了され、岩の殿堂剣岳に無事登頂でき忘れられない記念日となった。

追記

剣岳は1907年の初測量から100年となるのを記念して、この夏国土地理院がGPSで厳密な測量をしていた。その結果2999mだったそうだ。2005年の地図からは2999m。我々は2998mの最後の登山者となった?らしい。


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