白馬岳主稜 

          2932 (長野・富山)
2010年5月2日 はれ

自宅5:00〜桑名〜犬山〜豊科〜白馬9:00〜猿倉P(10:00〜10:15)〜白馬尻12:30(テント泊)

GWまっただなかだが、渋滞にはまらず村営猿倉荘に到着。満車状態。風がなく穏やか。気温も高い。小屋からスノーシューをつけ出発。トレースがあるので楽だ。雪が緩んでいるが沈みこまないので歩きやすい。ふとスノーシューってスキーと同じだなって思った。


上から単独女性が降ってきた。「昨日は風がきつくてガスって寒かった。景色も何もないなか、大雪渓を登った。今朝も山頂はガスって強風だったがやっとおさまった」と話してくれる。天候は良くなるようだ。

堰堤を越えたあたりで右手の白馬乗鞍からスキーヤーが降りてきた。そんなことができるっていいな。私もやりたい山スキー。

ドーンと白馬岳が聳えている。主稜を見上げると今この時間に登っている人がいる。小さく黒いゴマ粒。稜線の行ける所まで行くのだろう。

白馬尻。
約二時間で到着。標高が1500mと低いので体が楽。頭痛もなく、食欲も普通。テントは数張り。小屋がないのでここへ入る人は限られるようだ。
スノーバーを持った女性が降りてきた。主稜は雪が締まって歩きやすい。山頂直下は雪庇に穴があいているそうだ。一番最初の人がくりぬいたのかな?
岩場下にテント設営。ショベルで雪をならす。雪洞を掘るIさん。雪の階段をつけ、一夜の「御殿」を作るのに懸命の作業。楽しそう。夫は岩を伝って落ちてくる雪解け水を受け貯める。私は明日本番に備え、エネルギーを蓄えるしかない。働かなくてごめんなさい。

太陽が照りつけ暖か。夜用に着替え、足裏マッサージ。濡れたものをテントの上に干す。
見上げれば白馬大雪渓から降りてくる人が雪面に蟻のようにうごめいている。黒い点々で。

ヘリがぐるぐる旋回。見回りの山岳警備隊さんが「山スキーヤーが倒れている人を発見。昨日の強風に主稜から滑落したらしい」と話されたそうだ。
風に吹かれないように、絶対落ちないように行かなくては。不安が募る・・・

夕食は温まるため少しのお酒、ソーセージ、チーズ。ご飯、梅干し。緊張するとお腹が痛くなるので、体調を万全にしておく。

明日の準備。
軽量にする為、私のザックに必要なものを入れる。8.5ミリのロープ・スノーバー二本・シュリンゲ4〜5本・バイルなど登攀用具。食料、水、手袋の予備など。
風がなく静かな夜だ。星も瞬いている。明日は晴れますように。

2010年5月3日 はれ

テント場4:30〜(白馬主稜)〜山頂直下10:30〜(順番待ち約二時間半)〜白馬岳頂上13:50〜14:30(白馬大雪渓)〜テント(15:30〜16:00)(テント徹収)〜猿倉17:00〜白馬八方温泉〜白馬第五P(車中泊)


実は数日前から不安でよく眠れなかった。後戻りできない、いよいよ本番。確かな一歩で行くしかないよ。

靴に足用カイロ。ピッケルにアイゼン。ヘルメットにヘッドランプをつけていざ出発。ドキドキしてきた・・・


取りつきの雪崩れ跡は固く締まっている。あちこちのクレバスにはまり込まないように足元の雪をしっかり見る。
杓子岳がモルゲンロートに染まる。月が出ている。天気は快晴。数日前の新雪があるが雪質もいい。

松の木あたりではじめて簡易トイレを使う。
スパッと切れ落ちたナイフリッジはわき見をしない。ただ足元だけを見る。アイゼンどうしを絶対引っかけないように歩く。緊張感で心臓がとまりそうだが、むやみに怖がらないこと。

後ろから大学山岳会らしき二人が来た。新人が怒鳴られている。体育会系のしごきはこんなにきついのかと驚く。きっと一年で何でもできるように成長するんだろう。
ハイ松の急斜面は枝をしっかり持ってピッケルを打ち込む。後ろを振りかえるとトレースがくっきり。

時々ナイフリッジに雪のテント跡が残っていたりして驚く。テントごと落ちたらと思うと怖い。

高度が上がって、背後に杓子尾根、さらに八方尾根も見えてきた。右手前方には小蓮華山、白馬乗鞍の尾根。春山の白い山肌が眩しい。


途中で一息入れる時はスポーツ飲料ゼリー、ブドウ糖、飴などを口にする。一度、足裏がこむら返り。すぐ勺薬蕩を飲んで大事にはいたらなかった。
このあたりか?姿は見えなかったが雷鳥の鳴き声に励まされる。



一日で1400m上げなくてはならないからきついはずだが気持ちいい。雪稜を次々越えていく。その雪稜のひとつひとつが容姿も表情も違って美しい。辿ってきた稜線を振りかえるのも気分がいい。必死で歩いてきたけど何処を来たのかな?トレースが愛おしくさえ思える・・・


二峰あたりか?
今までと違ってザラメ雪。ピッケルやアイゼンが効かない。でも強く蹴りこむしかない、本当に心臓が止まった!
ここまでで「落ちたら死ぬ」と思うところが何か所もあった。肝を冷やすとはこのこと・・・。

頂上の雪庇が大きく見えてきた。なにやらムカデみたいな黒いものが・・・10人くらいが数珠つなぎで登っている。


雪庇がどんどん大きく迫ってきた。

白馬岳主稜Uにつづく。

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