上高地
      
(長野)


涸沢岳からのつづき。

2008年5月5日 くもりのち小雨

穂高岳山荘4:00〜奥穂高岳中腹〜白出のコル5:00〜(ザイテン)〜涸沢(6:00〜7:00)(テント撤収)〜本谷橋8:00〜横尾9:00〜徳沢〜明神〜上高地12:00〜(平湯温泉行バス)12:30発〜平湯(平湯の森)(13:00〜14:00)〜自宅18:00

山荘を出ると曇っている。天候は下り坂。 こんな悪天でも夫は奥穂へ行くつもりのようだ。ランプをつけて歩き出す。数メートル先は何も見えない。雪は緩んでいる。しまっていない。
梯子もその上の岩場も越えた。ガスはいっこうに晴れないし、誰一人登ってこない。相変わらず足元の雪しか見えない状態。
「こんなんじゃ迷うよ。たとえ山頂に立っても何も見えないし。絶対遭難はできないんだから。」などいろいろ説得してやっと夫をあきらめさせる。
どこか筋が伸びたのか足が痛いらしい。痛い所があってよかった!

梯子とその上の岩場を登りきった辺りだから多分稜線中ほどだろう。ここでUターン。

垂直の雪壁降りは慎重に。慌てずゆっくり。絶対滑落しないようにピッケルを雪壁にしっかり刺して一歩。アイゼンをしっかり効かし次の一歩。ピッケルを移動させ確実にまた次の一歩。緊張の連続。岩が見えて来た。

今度は岩と氷のミックス。ここの通過もアイゼンを引っ掛けないように。梯子は後ろ向きでアイゼンを滑らさないように。難関を通過して無事コルに到着。「ふーっ。」やっと緊張の糸がほぐれた。

山頂へは行けなかったが、約一時間、奥穂への核心部を上り降りしたのでこれで十分だ。
ガスはいまだに取れず、ホワイトアウトの世界をザイテンと思われる方向へと進む。視界がきかないほど不安なことはないが、トレースがあるから心強い。雲の上から下界へ降りていくような厳かな気分で雪を降る。


微かに前方眼下に涸沢が見えてきた。辺りには昨日登る時にはなかった冷蔵庫くらいのデブリがいっぱい。
悪天なので登ってくる人は数えるほど。前穂も奥穂も白い霧に包まれたまま山頂は望めない・・・。


常念岳辺りからガスがわきあがっている。

涸沢。
テントに着くと小雨がパラパラ。数時間後には雨になるかも・・・。
さっさとテント撤収。辺りのほとんどの人も急いでそうしているので残るテントは数えるほどになった。テント村が消えた・・・。
夫は足が痛そうなので、私のザックにできるだけ重いものを詰め込もう。大して入らないけど、私の足は元気だから・・・。

穂高の峰々と涸沢の雪とテント場に感謝をし、涸沢を後にする。


山スキーヤー数名が滑降してきた。自由に何処でも行けるので楽しそうだけど、このグサグサした雪は難しいだろうな・・・。

横尾本谷。
今日は雪が融けて水が溢れている。スノーブリッジも出来ているが今にも崩れそう。好天だった昨日一日で一気に雪どけが進んだ。
本谷橋はツアー登山者でいっぱい。皆ここでアイゼンをはずし、山スキーヤーは板をはずした。


ガスッて神秘的な屏風を仰げば雪解け滝。

横尾。
梓川は蒼い水が溢れている。橋手前広場の雪はそのままで融けていない。ここまで降りてもやはり前穂高は霧に隠れている。
再びH山岳会のMとさん。山の話を聞かせてもらいながら明神までご一緒する。


徳沢。
川べりに淡いピンクのニリンソウが咲いていた。

明神。
新しい明神橋を渡る。ケショウヤナギの新芽が綺麗だ。



河童橋手前で雨がパラパラ降りだしたので傘を出す。観光客はビニールカッパを着て大慌て。
「春雨じゃ濡れていこう。」と言うくらい。萌黄色に染まり始めた上高地。しっとり小雨の中、木道を歩くのもなかなか風情がある。
ここの固有種か黄色の蛙がいた。あちこちにフキノトウ。散策路では水芭蕉の小さい芽が出ていた。


「五月雨をあつめてはやし梓川」?と言いたいほどの蒼い水と峰の残雪が小雨に煙る・・・。早春の淡くやわらかい色に染まる上高地に別れを告げた。

バスターミナルは観光バスで占領され人が溢れている。いつもながら、沢渡行きは何本も来るのに平湯行きのバスはなかなかこない。やっと来たバスに乗り込む。片側通行で渋滞しながら平湯へ。

平湯温泉「ひらゆの森」 露天風呂も小雨に濡れながら・・・。

せせらぎ街道。
から松の淡いみどりが春色。せせらぎの水しぶきが新緑に眩しく光る。この街道はいつ通っても四季折々の美しさがあっていい。

三回目の春山穂高岳。
涸沢や穂高岳の雪の状態は毎年違うことを知る。今回は積雪量も多く雪崩も多かった。天候に恵まれ春山穂高岳を満喫でき幸せ。
次回は是非東稜から涸沢岳へとつなげたい・・・。
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