北鎌尾根〜槍ヶ岳

          3180m(長野)
KITAKAMA

北鎌尾根からのつづき。

2007年8月14日 快晴

テント(北鎌沢出合)4:00〜(北鎌沢)〜北鎌のコル6:30〜独標9:00〜槍ヶ岳14:30〜(槍沢・雪遊び)〜殺生ヒュッテ15:30(テント泊)

ここは独標から相当歩いた岩場。目の前には、ときよりガスが流れて幻想的な槍ケ岳。大きく聳えている。
足元はザレ場。こんなところでは一歩がしっかり決まらなくてずずずーと滑る。何とか確実な岩をと捜しながら進むが未熟な私はしっかり判断できずに何度もそうなる。硬い岩場を歩く時の何倍も疲れる。
そんな私を槍ヶ岳山頂直下の岩場に咲く健気な花達が励ましてくれる。彼女達の強くたくましい姿から勇気をもらって又歩き始める。


この辺りで、単独の麦藁帽子の方を追い越す。
先ほどの岩登り三人組ははるか下。ちっとも進んでいないように見える。どこかでビバーグするのかな?
もうすっかりくたびれ果てた頃、平らな広場に出た。

北鎌平。
ここは岩が敷き詰められたような台地。ピョンピョンと岩を飛んだり、乗り越えたりする。小股で歩けない岩場は疲れた体にはきつい。
足を上げているつもりでも上がっていなくてフラフラする。こんな時に滑落事故が起きるのではないだろうか?自分で自分を叱咤激励しながらゆっくり進む。
何処からか人の声がして、山頂から数人降りてきた。北鎌尾根を降るの!
ルートもよくわからないようで捜しながら・・・。好天なので尾根沿いに降れば問題はないのかな?凄い人達に驚く・・・。


今日、この尾根で出会った人は彼らを含めわずか10人。誰も来ないので静かでいい。それにせかされて慌てなくてもいいし・・・。
「もうこれ以上歩けないよ。」と弱気になっていると、目の前にチムニーらしき岩場が現れた。
よく見ると手がかりがあって苦労せずに登れた。楽しい岩登り。なぜか岩が目の前にあると体が弾む。
「どうやって登ったらいいのかな?」と考えている間にいつしか元気を取り戻していた。距離が短いのでちょっと物足りない・・・。
槍ヶ岳のチムニーと聞いただけで畏れをなしていたのになんともあっけない通過だった。「前尾根の方が難しいのでは・・・。」と思ったりする。


岩峰の上に人?すると間もなく、風雪に耐え今にも倒れそうな祠の前に飛び出した。
「やったー。槍ヶ岳山頂だ。」
山頂の人からはひょっこり現われた我々に「何処から来たの?」と驚きの目で見られ、声を掛けられる。

今日で三回目の槍ケ岳頂上。それも山好きな人なら誰でも憧れる北鎌尾根からの登頂。我ながら信じられない・・・。


最も苦しかった北鎌平手前のザレ場を思うと感無量だ。「よくここまで無事に来れました。」
振り返ってみると、北鎌のコルからほとんど大休みせず、又食べずに歩き続けている。
時々息を整える程度の休憩。VC入りの飴とスポーツ飲料だけのせかせか歩き。
又、肩が冷えたり暑かったりしたのでバンダナを掛けたりした。以前雪渓からの風に足が冷えて動けなくなったことがある冷え性の私。バンダナ一枚で体調を崩さずに済んだ。


疲れきってしばし放心状態。ゆっくり山頂を楽しもう。丁度ガスッて北方の展望はないが涼しい。キレットから北穂高岳あたりも少しガスっている。
午後のこんな時間なので人が少ない。山頂でこんなにゆったりできるとは思っていなかった・・・。
ふと足元の岩に「槍セミ?」避暑に来たのか疲れたのかまったく動かない。3000mの高地にセミ?あたりの人も皆寄って来てなんだかんだとセミに声を掛ける。
お盆なので山で亡くなった岳人がセミの姿でここに来たのではないかと思ったりする。千の風になって・・・。ちょっとしんみりして山頂に別れを告げる。

鉄のはしご。
そこには、はじめて槍ヶ岳に来て、こわごわ登った梯子を普通に降りる自分がいた。
いつか、もっと強くなって穂高を歩きたい、もっともっといっぱい山を歩きたいと思ったあの日が懐かしい。あれから随分時が経って少し成長していた(横ばいかも?)私だった。


槍ヶ岳山荘前からさらに殺生ヒュッテまで降りる。
槍ヶ岳を見上げながら降りる槍沢は一面のお花畑。綺麗。イワツメクサの白さが黒い岩に映える。
大喰岳には大きく雪渓が残っていてそちらの方にばかりに気を取られる。ちょっと寄り道。
雪渓に降りて、つま先で蹴りこむと雪が飛び跳ねた。八月の雪遊び。それは思いがけない「槍ヶ岳」からのプレゼント・・・。

夕食。
カップメン、トマト。
ヒュッテで明日の水とポカリスエットを買う。
昨夜に続き、星が綺麗。黒いシルエットの槍ヶ岳と瞬く星に魅了される槍沢だった。

槍ヶ岳(東鎌尾根)につづく。

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