西穂高岳
    2909m
(長野・岐阜)


西穂高岳Tからのつづき。

2007年7月16日 霧雨のちくもり一時晴れ

自宅3:40〜羽島(名神、東海北陸道)高山西〜新穂高ロープウエイP7:10(仮眠)

ロープウエイ始発8:45〜【7分】ロープウエイ山頂駅西穂高口9:00〜西穂山荘10:00〜独標11:00〜西穂高岳山頂(12:20〜12:40)〜ピラミッドピーク13:20〜独標13:30〜西穂山荘14:00〜ロープウエイ山頂駅(14:50〜15:15発)〜P15:30〜新穂高温泉富貴(15:45〜16:30)〜自宅20:30

次の岩場を越えたあたりで少し先を行く夫が「滑落者。こんな所でというような場所で落ちている。気をつけよう。」
近づくと登山道より数十メートル下で赤いカッパの人が倒れている。落ちたままの姿勢で動けないようだ。先ほどのレスキューの彼がヘリ輸送準備の為、谷へ降りて行く。
朝九時頃、山頂から降った。持った岩と共に落ちたらしい。山のベテランだそうだ。顔面から出血、意識ははっきりしている。
この岩道に慣れた方だった。でも今日は雨上がりで岩は濡れている。いつもどこにでもだれにも滑落する危険性はある。それに尖った岩が多いのでたとえ転んだとしても大きい怪我になるだろう。
このルートは ピラミッドピークから山頂までに数箇所岩を抱きかかえたりトラバースしたりするところがある。私はそのあたりでいつも緊張する。転ばないように落ちないように細心の注意を払わねば・・・。
油断は禁物。より慎重に。


山頂が見えてきた。誰か人がいる。上高地側の谷に残っている雪渓も目に入る。
直前のスラブ岩。本日の核心部!慎重に一歩一歩・・・。


「やったー。西穂高岳山頂だ。」
ここでタイミングよく夫の携帯が鳴る。「大丈夫?生きている?」と長男から。「山頂に着いた所。」と夫。
新潟、長野の一部で午前十時過ぎに震度6の地震があったそうだ。我々は丁度山荘を出たあたりで何も感じなかったが・・・。
子供に心配をかけて困った親。
山頂には夫婦らしき方。「滑落しないようにお互い気をつけましょう。」と一足先に降りられた。お二人とも足元はしっかりしている。
その後は誰も来ない。西穂高岳山頂を独り占め。なんと贅沢な・・・。
タカネツメクサ?の小さい白い花が咲いている。山頂で見た唯一の花。
前方の奥穂高岳は白い霧の中。二年前にここから先を歩いたのは夢のよう。また昨年正月のあの積雪時にどうやってこの岩場を歩いてきたのかと思う。自分の事ながら信じられない。

霧に見え隠れする岩峰に見とれながら西穂山頂を楽しむ。クリームパン、巨峰、さくらんぼ。


もう少しいたいけど、ロープウエイの最終時間に間に合うように早めに降りなければならない。
直下はスラブだから慎重に一歩一歩降る。時々クライムダウンで。確かな一歩で、あわてないように・・・。


ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲなどの小さい花々が山頂直下の岩の隙間に咲いている。険しいこの場所で今、命を煌かせている。一瞬青空が広がってより美しく輝く。あまりの清々しさに胸が熱くなって花に囁く。「綺麗。」と。
そしてここで雷鳥。なにやらその花をついばみはじめた。可憐な花々は雷鳥の命もつないでいる・・・。
西穂3000mに咲く花はなんと健気で逞しいのだろう。厳しい自然条件の下、誰に頼ることもなく自分自身の力だけで強く生きている。何もかも自然に委ねて凛としてそして挺身的で・・・。
涙腺が弱い私は目頭あつくする・・・。今日この花に出会えてよかった・・・。



西穂高岳Vにつづく

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